全国自動車交通労働組合連合会はハイタク産業に従事する労働者で構成する労働組合の連合体です。本ホームページは、どなたでも自由に全てご覧いただけます。


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全自交労連
2025年度
運動方針

<メインスローガン>
全産業平均を上回る賃金・労働条件の実現!


<サブスローガン>

『ライドシェア完全解禁』絶対阻止!

地域公共交通は我々が守る!

全自交の力を未来へつなぐ!

<重点項目>

  1. エッセンシャルワーカーにふさわしい、全産業平均を上回る賃金・労働条件を築き上げよう!
    長時間労働を解消し、女性も若者も高齢者にも魅力的な働きやすい職場環境を推進しよう!
    労働基準法や最低賃金法、「改善基準告示」の違反を職場から一掃しよう!
  2. 『ライドシェア新法』絶対阻止!安定供給を実現し『日本版ライドシェア』も不要な状況をつくろう!
  3. 全自交運動の次世代の担い手を育成し、組織の維持・拡大を実現しよう!
    持続可能な全自交運動のための財政を確立しよう!
  4. 安全・便利で持続性のある地域公共交通を構築しよう!
    国や自治体から労働者支援・利用者支援・産業支援の公助を獲得し、地域公共交通を守ろう!
    自動車教習所を守り、LPガススタンドなど交通を支えるインフラを守ろう!
  5. タクシーの適正運賃と適正需給を実現し、接客・接遇の向上で利用者の信頼に応えよう!
    配車アプリ・プラットフォーマーへの規制を確立しよう!
  6. 白タク根絶!都市型ハイヤーの違法・不適正営業撲滅!運転代行の適正化!
  7. 自動運転タクシーの実用化を見据えた対応策・方針の検討!
  8. 政権交代を実現し、労働者・生活者のための政治を実現しよう!
  9. 反戦・反核・反差別の運動を強化し、誰もが安心して平和に暮らせる社会をつくろう!

はじめに

ハイヤー・タクシー・自動車教習所で働く労働者の賃金と労働条件そして社会的地位を他産業以上に引き上げることができるのか、それとも、今までと同じ待遇のままで産業の衰退を招くのか、今こそが分岐点です。物価が高騰し他産業で大幅な賃上げが続く現状だからこそ、全自交の運動によって、エッセンシャルワーカーに相応しい待遇を勝ち取らなくてはなりません。

タクシーにおいては、全ての地域で運賃改定や迎車料金の創設・引き上げを求め、適正な配分を勝ち取り賃金・労働条件の向上を実現することが最重要課題です。同時に公的支援による利用者負担の軽減などの対策を求めていきます。ハイヤーにおいては、顧客に対する適切な価格転嫁を実現し、賃金・労働条件の改善を成し遂げるとともに、不適正営業が強く懸念される都市型ハイヤーの規制強化を求めます。自動車教習所においては、大幅なベースアップと働きやすい職場環境の両立に取り組み、ダンピング料金の根絶等を求め運動します。

全自交労連の組織課題では、引き続き財政再建に注力するとともに、労働運動を担う次世代の育成を、特に重要な課題と位置づけ取り組みを強化します。

長年にわたる我々の粘り強い闘いにより、ライドシェア完全解禁の動きは停滞しています。しかし、万が一にも完全解禁が実現すれば、ハイタク労働者の生活と利用者の安全・安心が破壊されることになります。警戒を一切ゆるめず、絶対阻止の闘いを継続します。日本版ライドシェアについても、これ以上の緩和を許さず、終了させなくてはなりません。「地域公共交通は二種免許のプロドライバーが支える」という気概で、積極的に移動困難の解消に力を尽くします。そして、自動運転タクシーの実用化を見据え、雇用と賃金を守るための対応を早急に検討します。

自民党や維新の会のライドシェア推進派を封じ込め、労働者の生活と国民の移動する権利を守る政治を実現するためには政権交代が必要です。2024年10月の衆院選では、全自交の支持する立憲民主党は50議席増の大躍進を遂げた一方で、2025年7月の参院選では、全自交が推薦する岸真紀子候補が見事当選を果たしたものの、ハイタク労働者のために力を尽くしてきた森屋隆候補が落選し、立憲民主党としても議席を伸ばすことができませんでした。我々はこの結果を重く受け止め、さらに政治闘争に力を注ぐ必要があります。

そして、安心して働き生活するためには、まず平和であることが大前提です。戦後80年という節目に当たり、平和を守り、核なき世界を実現するための運動に改めて力を注ぎます。同時に差別主義や排外主義と闘い、全ての人の人権が守られるよう運動します。

これら全ての課題に対し、我々は要求するだけの存在であってはなりません。国民の移動を支えるエッセンシャルワーカーの責任と矜持をもって誠実に業務に当たり、全自交の旗の下で団結を強化し、勝ち取った信頼を支えに、力強く要求を実現していくことこそが我々に課された使命です。

Ⅰ.内外情勢の特徴

1.世界情勢

2025年、世界秩序はアメリカのトランプ大統領の暴走によって大きく後退しています。経済面においては、根拠もないまま高率の関税を課し、さらに朝令暮改を繰り返すため世界経済は大きく混乱。世界の安定や平和の面でも、アメリカは国連の様々な機関や、WHO(世界保健機関)、地球温暖化を防止するためのパリ協定など、多くの国際的な枠組みから離脱。国際法違反のイスラエルを徹底的に擁護してガザの住民を追い出す提案をしたり、イランに対し一方的な先制攻撃を行ったり、ウクライナ・ロシアの停戦交渉でも迷走を繰り返しています。アメリカに対する世界の信頼は低下する一方ですが、このまま多くの国がアメリカのような自国ファーストの姿勢で行動するようになれば、第三次世界大戦、相互関税による世界恐慌、コロナ禍以上のパンデミック、後戻りのできない急激な地球温暖化など人類にとっての不幸な未来が待ち受けています。今こそ国際協調が必要です。

またトランプ政権は、民主主義を守り抜くことの大切さと困難さを我々に改めて示しました。長年「自由と民主主義のリーダー」を自負してきたアメリカが、またたく間に、人権や法律、議会や司法を無視した独裁国家に変貌しつつあります。しかし、その大統領を選んだのもアメリカ国民自身でした。かつてのナチスのように民主主義や国そのものを破壊する候補や政党を、絶対に選ぶことのないよう、我々はアメリカで起きている出来事を他山の石として、政治に真剣に向き合う必要があります。

2.国内情勢

国内では「物価高」が国民生活を直撃しています。2020年の消費者物価を100とした場合、2025年7月の消費者物価は111.9にまで上昇しました。特に米価は激しい上昇を記録し、生活不安を増大させました。連合の2025春闘集計によれば、平均で16,356円・5.25%、中小でも12,361円・4.65%の大幅賃上げが実現していますが、物価の影響を考慮した労働者1人当たりの「実質賃金」は、2025年1月から6月まで6ヵ月連続で前年同月比マイナスとなっており、未だに賃上げが物価上昇に追い付いていません。賃上げができない企業の労働者や年金生活者、そして歩合制が主体のタクシー乗務員にとっては物価高の影響はさらに深刻です。

物価高対策と賃上げを強力に進めていくためにも、政治の役割は重要です。長年の自民党政治に「NO」を突きつける国民の意志により、衆参両院で与党過半数割れの状況が出現しました。一方、参議院選では、ハイタク労働者のために力を尽くしていただいた森屋隆候補の議席を守れず、我々が支援する立憲民主党は議席を伸ばせずに排外主義を掲げた参政党の躍進を許してしまいました。

今年も異常気象が猛威を振るいました。今年8月5日は群馬県伊勢崎市で観測史上最高の41.8度を記録。歴代の最高気温ランキングの上位5位を全て今年の記録が占めるほどの異常な暑さに列島が苦しみ、熊本等では豪雨による災害も生じています。

Ⅱ.ハイタク産業の動向

1.ライドシェア関係

① 「ライドシェア新法」・「ライドシェア完全解禁」を目指す動き

「ライドシェア完全解禁」を目的とした法整備、いわゆる「ライドシェア新法」を目指す動きは、我々の必死の闘いにより、弱体化しつつあります。日本維新の会は2025年4月11日、議員立法として衆議院に「ライドシェア事業に係る制度の導入に関する法律案」を提出しましたが、同法案はまともに審議されることもなく同年6月22日、通常国会閉会とともに継続審議となりました。この法案は▽タクシー事業者以外の参入(=プラットフォーマーによる直接運営)▽ドライバーは二種免許不要で業務委託を推進▽台数や導入条件を無制限に▽ダイナミックプライシング――と、まさに「ライドシェアの完全解禁」を目的としたものです。しかし、その内容・形式は法律案としての体を成していないお粗末な出来であり、維新の会やライドシェア推進派のパフォーマンスに過ぎず、よほどの政治情勢の急変がない限り成立の見込みはありません。

長年、ライドシェア解禁派の牙城となってきた規制改革推進会議の動きも低調になりつつあります。昨年は、推進会議の『答申』や、それを受けて政府が定める『規制改革実施計画』、『骨太の方針』において、「タクシー事業者以外の者が行うライドシェア事業について、内閣府及び国土交通省の論点整理を踏まえ、法制度を含めて事業の在り方の議論を進める」との危険な文言が盛り込まれていましたが、今年は「前年の方針を踏まえ」という記載に止まり、〝ライドシェアの法制度〟に関する新たな記載は盛り込まれませんでした。

2023年夏の菅義偉元総理の発言以来、ハイタク業界を吹き飛ばす勢いで吹き荒れたライドシェア解禁の暴風は、ここに来てようやく落ち着きつつあります。これは我々の運動や、政官労使を挙げた交通空白解消の取り組みの結果であり、何よりもハイタク労働者が日夜、安全に誠実に業務を全うし続けたことの成果です。

しかし安心はできません。ライドシェア推進派はこれまでも、何度も何度もゾンビのようによみがえってきました。今後、少数与党となった自民党が維新の会との連立政権を組む事態や、人気回復を狙って小泉進次郎氏を総裁に据えるといった事態が発生すれば、再び情勢は急変します。引き続き、ライドシェアの完全解禁・合法化阻止の運動と政治闘争を継続しなくてはなりません。

② 日本版ライドシェアの動向、無秩序な規制緩和

2024年4月より、タクシー不足を補う手段としてはじまった、日本版ライドシェア(自家用車活用事業)は、ライドシェアの完全解禁阻止という点では一定の役割を果たしましたが、相次ぐ規制緩和により、当初、国土交通省が我々に説明してきたものとは大きく姿を変えつつあります。

イベント開催や自治体の要望などを理由に、日本版ライドシェアの運行が許される地域・曜日・時間帯・台数などの規制は、わずか1年半の間に何度も緩和されてきました。大阪関西万博の開催を口実とした大阪府内全域・万博開催中の全日・24時間の日本版ライドシェア運行はその際たるものであり「タクシーの補完」という大原則を大きく逸脱しています。このように無秩序な規制緩和は、乗客の安全・安心とタクシー乗務員の賃金の悪化を招き、〝実質的なライドシェア完全解禁〟にもつながりかねません。

また、本来はタクシー会社だけに運行が認められる制度でしたが、国交省は鉄道・バス会社にも運行を認める方針で、2025年6月には沖縄で貸切バス会社による実証運行が始まりました。この実証運行において鉄道・バス会社がタクシーの営業許可を新たに取得することとなりましたが、その際に「保有するタクシーの台数がゼロ台でも許可する」という非常に奇妙な運用が行われたことには十分警戒すべきです。

一方、利用者の反応は冷静です。制度開始から1年4カ月が経過した2025年8月3日時点で、日本版ライドシェアは全国47都道府県の141地域で運行の認可がなされ、運行回数は延べ921,149回となっていますが、その62.2%は東京特別区・武三が占めています。延べ運行回数が1万回を超える地域は、東京を含めわずか8地域のみで、大半の地域では1週間に数回~数十回の利用しかなく、タクシー会社からは「赤字だけど仕方なくやっている」との声が聞かれます。

大阪の24時間運行についても、6月14日付の読売新聞の記事「『万博特需』あてはずれ?ライドシェア苦戦」で、万博開会後の日本版ライドシェアの週末の運行回数が万博開催前より3割減少し、ほとんど利用されていない実態が報道されました。

実際、国交省が毎週公表しているタクシー配車アプリのマッチング率も、ほぼ全ての地域で常に90%以上をキープしており、もはや「タクシー不足」の状況にはありません。「タクシー不足を補うための例外的措置」に過ぎない日本版ライドシェア制度は、不必要なことが明らかとなった地域では早急に終了すべきです。未だにその終了基準すら定まっていないことは強く批判されなければなりません。

近年、国土交通省は、通達や事務連絡で、新たな制度を次々と実施していますが、従来のタクシーに関する制度・政策との整合性を取ることなく、ツギハギの制度を積み重ねていくことは将来に禍根を残します。いま「都市型ハイヤー制度」が規制の抜け穴となって様々な問題を生じているように、日本版ライドシェア制度もこのまま放置すれば、タクシーの需給規制・安全規制を破壊し、ハイタク乗務員の生活を脅かすものとなる恐れがあります。

全自交労連として、「最優先されるべきは、ハイヤー・タクシー労働者の待遇改善による供給不足の解消だ」と今後も強く訴え続けます。

③ タクシーへの信頼を守る

ライドシェアを阻止するために、最も重要なことは、「タクシーの方が安全で安心だ」という利用者からの信頼を守り抜くことです。残念ながら、タクシーによる死亡事故やひき逃げも皆無ではなく、言語道断の性犯罪事件も発生しています。交通事故を一件でも減らすよう努力し、性犯罪等の悪質行為を根絶しなくてはなりません。利用者の信頼を守ることは、プロドライバーである我々の責務です。

2.白タク、都市型ハイヤーの違法営業

インバウンド需要の高まりに比例し、訪日外国人旅客をメインターゲットとした白タクが大都市や観光地で猛威を振るっています。一方で全自交の各地連本や各県交運労協が、空港や観光地での白タクの実態を運輸局や県警に伝え、取り締まりを求め続けた結果、最近では「白ナンバーで営業する白タクは減った」という声も聞かれます。

代わって、大きな問題として浮上してきたのが、緑ナンバーの『都市型ハイヤー』による不適正営業です。緑ナンバーとはいえハイヤーですから、流し営業や付け待ちはできないはずですが、空港やクルーズ船の発着港で外国人旅客相手に「ドライバーが客引きをしている」という目撃証言も多く、日本のハイヤー・タクシーへの信頼を貶めています。悪質な都市型ハイヤー事業者が、ナンバープレートを「月にいくら」で、一般ドライバーに名義貸ししている疑惑も報道されており、二種免許不保持者が乗務していることも強く疑われます。

「都市型ハイヤー」は、改正タクシー特措法の台数規制の枠外で、新規許可や増車ができるため、インターネット上には、行政書士等による開業サポートの広告が溢れ、ここ数年で事業者数も台数も急増しました。報道によれば、関東運輸局の管内では、今年3月末現在、415社6823台が都市型ハイヤーの営業許可を得ており、わずか1年で82社1921台も増加。うち268社5612台が東京特別区・武三に集中しています。また大阪府でも66社901台の都市型ハイヤーが存在するようです。都内で新規許可を受けた事業所の中には、会社所在地がアパートの一室となっているなど、最初から名義貸しを目的に会社を設立したのではないかと疑いたくなるケースも見られます。

全自交労連はハイヤー部会を中心に、これまでも都市型ハイヤーの実態把握と規制を国に求めてきました。国土交通省は「事業許可時に適正に審査している」と回答していますが、開業後にルールを守り、本当に事業を営んでいる会社がどれだけあるのか、実態は全く不明です。国交省には許認可権者としての責任を果たし、実態把握と厳格な監査・処分を行うよう求めるとともに、新規参入・増車への規制も求めていかなくてはなりません。

また、白タクと違い、緑ナンバー車両の違法営業は警察による取り締まりが難しいという問題があります。道路運送法に基づく処分権限を持つのは国土交通省ですが、最も重い処分でも「事業許可取消」でしかなく、ペーパーカンパニーだった場合、行政処分が抑止力になりません。国交省が警察に対して公益通報し、「公正証書原本不実記載等罪」や「詐欺罪」等で刑罰を科すことや、実態のない会社に名義を貸した運行管理者の資格をはく奪するなどの厳しい対応が必要です。なお、2025年10月には、日本で起業する外国人向けの「経営・管理ビザ」要件が厳格化される予定となっており、実態のない外資系都市型ハイヤーへの抑止力となるか注目されます。

3.タクシーの輸送実績と経営状況

◎全体の傾向

2023年度(2023年4月1日~24年3月31日)のタクシー輸送実績の全国平均を見ると、実働1日1車当たりの営業収入(日車営収)は、3万6958円で前年度比3810円(11.5%)増と大幅にアップ。1日1車当たり輸送回数は19.8回で22年度と変わりがなかったため、運賃改定による単価の向上が、ダイレクトに日車営収を押し上げています。

また全国のタクシー会社の合計でも、総営業収入は1兆2669億9794万円で、前年度より1173億2456万6千円増加(9.3%増)と大幅な増収になっています。一方で総輸送回数は前年度より718万4415回減少(1.1%減少)と微減し、6億7918万1113回でした。また営業車の稼働率の平均も前年度より0.6ポイント低い58.3%でした。

近年の春闘交渉では、「乗務員の収入は上がっているが、稼働が減っているので会社は儲かっていない」という主張が決まり文句になっていますが、全体の統計では総営収も上がっているので、「平均的には、会社の収入も確実に増えている」ことが事実です。全国ハイヤー・タクシー連合会が各都道府県の9社~5社に行っているサンプル調査では、2023年1月から2025年7月まで、ほぼ全ての月で総営業収入の金額が前年同月を上回っていますので、2年半にわたり営収増加の傾向は続いていると言えます。

◎地域間・企業間の格差と、倒産・廃業件数の増加

しかし、全国平均とは別に、地域間や企業間の格差が拡がっていることも事実です。先ほど示した全タク連のサンプル調査で、2025年7月の営業収入を見ると、コロナ前の総営業収入(2019年7月時点)を上回っている地域が16都府県ある一方、残りの31道県は未だにコロナ前の水準に届かない状況が続いています。

総営収がコロナ前を上回ったのは、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、富山、福井、岐阜、京都、大阪、鳥取、広島、福岡、熊本、沖縄の各都府県でした。つまり首都圏と大都市部、そして観光需要の高い地域では総営収も大きく回復しています。一方で、岩手県では総営収がコロナ前の79.3%、山形県80.3%、新潟県83.2%、静岡県77.1%、和歌山県73.3%、愛媛県84.7%など、運賃改定を挟んでいるにも関わらず、いまだにコロナ前の8割前後しか営収が回復していない地域も存在。地域間の格差は拡大しており、特に東北地方と四国地方は全県がいまだにコロナ前の水準を下回っています。

また、会社間の格差も拡がっています。2025年1月に調査会社が発表したレポートでは、2024年のタクシー会社の倒産や休廃業解散は82件で、19年の73件を上回り、2010年以降では最多となりました。そして2025年に入っても、5月に全自交秋田地連の仲間が多く所属する秋田市の老舗「あさひ自動車」が倒産手続きを開始するなど、倒産・廃業の流れは止まっていません。

倒産・廃業には、コロナ禍での借入金や後継者不在という事情もありますが、最大の要因は、乗務員不足です。経営が苦しいといって短絡的に乗務員の待遇を下げれば、さらに乗務員が不足する悪循環にはまり、廃業・倒産への流れを加速させることになります。タクシー会社の生き残りは、どれだけ乗務員の待遇を引き上げ、確保できるかにかかっているのです。

4.タクシー乗務員の賃金・労働条件

◎全国平均の年収は頭打ち

ロナ禍以降、タクシー乗務員の賃金はV字回復してきましたが、最近は頭打ちの傾向です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、2024年6月の全国のタクシー乗務員(男女)の平均月例賃金(残業代等を含む)は327,300円で、23年6月と比べ11,200円ダウン。一時金等(2023年実績)を合計した推計年収は4,148,500円で、23年の推計年収より41,400円ダウンでした。都道府県別にみると、29府県では推計年収が増加したものの、17都道府県がマイナスとなり、特に東京都の乗務員年収が前年比83万7000円減と、大きく落ち込んだことが全体の平均営収に影響しました。

全産業の平均年収との格差は、23年に879,500円まで縮まりましたが、24年は全産業平均の伸び幅が大きく、1,121,400円に再び格差が拡大しています。

賃金が頭打ちとなった要因には、2年以上前に運賃改定が行われた地域での増収効果の終了、乗務員数の回復による稼働台数の増加などが考えられますが、この間も物価と他産業の賃金は上がり続けているため、さらなる価格転嫁と賃金への配分が求められます。

また、2024年の厚生労働省調査では、男性乗務員の平均年収(4,175,800円)と女性乗務員の平均年収(3,596,100円)に大きな格差が生じたことも特色でした。通常、タクシー乗務員は男女間の賃金格差がほぼなく、今年の調査の月間総労働時間の平均も、男性乗務員191時間に対し女性乗務員186時間とあまり差がないため、これだけ大きな賃金差がついた理由は不明ですが、この傾向が続くようであれば、要因を分析する必要があります。

◎2025春闘

全自交労連の2025春闘は「賃上げなき産業に未来なし」「勝ち取れ!大幅賃上げ 急げ!価格転嫁」のスローガンを掲げ、他産業との賃金格差の是正、急激な物価高騰から組合員の生活を守るための春闘方針を確立。タクシーでは8%以上、月額28,000円以上(運賃改定による増収分の反映含む)、ハイヤーで8%以上、月額28,000円以上(歩合給中心の賃金体系の場合)、及び6%以上、月額21,000円以上(固定給中心の賃金体系の場合)、自教では月額18,000円以上を柱とする統一要求を決定し、各職場で賃上げを主体とした要求及び交渉が行われました。コスト高騰や稼働率低下による業績不調を理由とする事業者との間で厳しい交渉が続き、いまだ継続交渉となっている職場もありますが、7月7日時点の最終集約では、16地連本の80単組・支部・分会(組合員ベースでは12104人以上)が妥結に至りました。

タクシーでは歩率改善や、固定給のベースアップ、通勤交通費をはじめとした各種手当の新設・増額、一時金の増額等の成果が見られました。月例賃金については現状維持となった単組が大半ですが、労働分配率を維持することにより、運賃改定の増収分がどれだけ賃金に反映されたかは今後の調査により明らかとしていきます。ハイヤーでは、日交労働組合のベースアップ10,000円獲得をはじめとした賃上げの成果が見られました。自教職場では妥結した3単組全てがベアを獲得しています。

2025年度においては、『春闘生活実態調査』の実施時期を早め、25春闘による賃金改善効果と組合員の賃上げに向けた希望額を早期に把握して、26春闘に向けた方針を打ち立てていきます。

また、今春闘より全自交労連として『春闘集約アンケート』を実施。単組・支部・分会における要求書の提出状況を調査し、今後の闘いに生かす取り組みも実施しました。有効回答が得られた93組織中、87組織(94%)が要求書を提出しており、そのうち76組織が事業者からの回答が得たことが明らかとなり、要求書提出の重要性が明確となりました。

◎最低賃金の大幅な引き上げ

政府方針は、2029年度までに全国加重平均1500円への到達であり、最賃を1500円以上に引き上げることが与野党の一致した見解です。

2025年の最低賃金の上げ幅は、中央最賃審議会の打ち出した目安額「63円」を上回る、全国加重平均66円の引き上げとなり、加重平均額は1121円になりました。

東京都や神奈川県など、元々の地域最賃額が高い都道府県では目安額通りの63円の引き上げとなりましたが、秋田県の80円、岩手県の79円、長崎県の78円など、今まで最賃額の低かった都道府県は目安額を大幅に超える引き上げを決めたケースが多く、近隣県との賃金格差縮小も意識されました。一方で、引き上げの時期を遅らせる傾向が顕著となっており、特に秋田県が2026年3月31日を適用時期としたことは大きな問題です。新たな最賃額が10月に適用される地域と比べ、秋田では半年間、最賃額が低いままとなるわけで、「実際の効果は80円ではなく40円にしかならない」という識者の声もあります。

最賃額の大幅な引き上げは、タクシーをはじめ労働集約型産業の中小企業にとって難しい問題であることは事実ですが、国際的にはまだまだ日本の賃金は低い水準にあり、他国との賃金・物価格差を埋めていくためには今後も最賃の大幅引き上げは不可欠です。最賃の引き上げには、人件費を前提とした労働生産性の向上により全体の賃金水準を引き上げる効果があることも忘れてはなりません。

一方で、需要が少なく、まじめに働いているタクシー乗務員すら最賃額に抵触してしまうような地域では、引き上げ分をまかなえるような国の直接支援が必要です。現在の「業務改善助成金」制度は、あくまでも設備投資に対する補助金であり、過疎地のタクシー会社が利用できるような制度になっていません。最賃引き上げ額をすべて運賃に反映して利用者に負担を求めた場合、過疎地のタクシー運賃は極めて高額になってしまいます。地域の足を確保するためにも抜本的な支援体制の見直しが必要です。

5.人材不足の状況

◎増加に転じた乗務員数(全国の法人タクシー運転者証交付件数)

全国の法人タクシー乗務員数は、2024年3月末から25年3月末までの1年間で7,157人増えました。コロナ禍で大きく減少した乗務員数は順調に回復しつつあります。

運賃改定や迎車料金による価格転嫁を進め、春闘交渉で賃上げや適正な労働分配率を勝ち取り、引き続き待遇改善を進めていけば「乗務員不足」は解消します。

◎二種免許の取得時間の短縮

た警察庁が通達を改正し、普通自動車第二種免許を取るための自動車教習所のカリキュラムが2025年9月以降、大幅に短縮されることが決まっています。これまで最短で学科19時限と技能21時限の合計40時限の教習が必要でしたが、今後は学科17時限と技能12時限の計29時限にまで短縮されます。新人タクシー乗務員の養成にかかる時間と経費が大幅に短くなることが期待されますが、二種免許=プロドライバーの価値や質の低下を招かないよう、一層安全運転に気を配る必要もあります。

6.運賃改定・冬季割増・迎車料金

2022~2024年にかけ、全国のタクシー運賃ブロック101カ所の全てでタクシー運賃改定が進みましたが、2025年に入り、再度の運賃改定の動きが相次いでいます。8月時点で約40の運賃ブロックで新たな運賃改定の申請が出され、岩手や京都、滋賀ではすでに新運賃がスタートしました。

全自交労連が、今春闘で掲げた2万8千円以上の大幅賃上げや、全産業平均に負けない賃金を実現するためには、早急に再度の運賃改定が欠かせません。運改の増収分を労働者に正当に分配させ、賃上げにつなげましょう。

2024年12月には、運賃改定の手続き開始に必要なハードルが、地域のタクシー台数の「7割以上の申請」から「5割以上の申請」に緩和され、さらに101の運賃ブロックが69に統合されて、より運賃改定がやりやすくなる制度改正が行われました。国も労働者の賃金・労働条件向上を目的とした価格転嫁を後押ししています。

さらに「冬季割増運賃」制度に関しても、大きな前進が期待されます。冬季の数カ月間、運賃を2割増しに設定できる冬季割増制度は、これまで北海道、秋田、山形、新潟、長野の限られた地域でのみ認められてきましたが、北海道・東北・北陸信越地方においては事業者の申請があれば認める方向で緩和の検討が進んでいます。実際に、これまで豪雪地帯であるにも関わらず冬季割増が認められていなかった青森地区では、8月20日に冬季割増の導入を含めた運賃改定申請が行われました。

冬季割増制度の緩和は、全自交青森地連をはじめとした全自交東北の仲間が、国土交通省や東北運輸局、国会議員等に再三求めてきた事項であり、全自交の運動によって制度改正が実現したと言っても過言ではありません。

また、タクシーメーターに関し、タイヤの回転数ではなくGPSの位置情報等で走行距離を判定する「ソフトメーター」の登場により、割増や割引を従来よりも柔軟に行える運賃制度が検討されており、その動向が注目されます。ソフトメーターに関しては、機器の不調によって現場の乗務員が不利益を被ることがないよう、求めていきます。

運賃改定だけでなく、迎車料金の設定や値上げも急務です。全国的にはまだまだ「迎車料金ゼロ」の地域や、ごく一部のタクシー会社しか迎車料金を設定していない地域が多く、例えば東北地方は全県で迎車料金の設定がありません。ただ、迎車料金の新設や値上げに向けた動きは各地で進んでおり、直近でも仙台や秋田で迎車料金の設定申請が出されました。

お客さまに呼ばれて走る時間、乗務員は労働をしているのであり、他の乗客を乗せることもできず拘束されています。その対価を求めることは決して間違ったことではありません。特に、迎車料金を収受できていない郡部ほど、お迎えの距離が長くなる傾向があるため、定額制だけでなく、空走距離に応じて迎車料金を収受する仕組みを検討することも重要です。実際に、対価が取れないために遠方の配車に応じられないという事情を抱える現場もあり、交通空白の解消という意味でも適正な迎車料金の設定が必要です。

そして、年々アプリ配車の比率が高まる中で、タクシー会社はアプリのプラットフォーマーに手数料を取られているため、迎車料金がゼロのままではどんどん利益率が落ちていきます。「タクシーを呼ぶのはタダ」という消費者意識が強い地域で、客離れを懸念する経営者の心情はよく理解できますが、放置していれば状況は悪化するばかり。今こそ迎車料金の設定に踏み切る時です。労働組合としても、迎車料金の設定に関する統一要求を行うなど、地域全体で迎車料金の設定が広がるよう運動を進めなくてはなりません。同時に、迎車料金を賃金に反映させないような事業者に対しては、適正分配を求めて闘います。

またお迎え先で長時間の待機を強いられることは営収面で大きなロスとなっており、現場の強い不満となっています。お迎え先での待機時間を短縮する対策や長時間の待機に対する対価の収受などの対策も必要です。

7.自動運転タクシー

無人車両が有償で人を運ぶ自動運転タクシー(ロボタクシー)の日本での運行は、「まだまだ先のこと」とは言えない状況になっています。

◎海外の状況

すでにアメリカのサンフランシスコ、ロサンゼルス等の大都市や、中国の北京、上海、深圳などの主要都市の一部では、レベル4自動運転(特定条件下での無人運転)の無人タクシーによる営業運行が始まっており、その利用者数やサービス提供エリアを急速に拡大しています。

アメリカで先行する自動運転企業はグーグル系列のウェイモ(Waymo)ですが、米メディアによれば、2025年5月20日にウェイモの無人タクシー運行回数が延べ1000万回を突破。最近は物珍しさから、有人のタクシーやライドシェアより運賃が高いにも関わらず、1週間で25万回超の運行回数があると報道されています。このウェイモに対抗してテスラ(Tesla)も6月22日、テキサス州のオースティン市の一部でロボタクシーの商業運行を開始しました(無人ではなく、助手席に安全監視員が同乗)。

中国では政府が主導して自動運転の実装を進めており、主要企業のバイドゥ(百度)は2025年3月に運行回数1000万回を突破したと発表しています。

両国の企業とも、海外輸出を始めており、ウェイモは日本で、中国系企業は中東やスイスでの実証運行に取り組んでいます。

一方で、自動運転はまだまだ不完全な技術でもあります。テスラ車では、2016年と2018年に自動運転モードで走行中に運転者が死亡する事故、2018年にはウーバー(Uber)の開発していた自動運転車が時速64キロで歩行者をはね死亡させた事故、2023年にはGM傘下の企業の自動運転車が別の車にはねられた歩行者をひく事故が起き、その後にウーバーやGMが自動運転の自主開発から撤退しました。中国でも2025年4月、シャオミ製のEVが自動運転モード走行中に高速道で衝突事故を起こし、乗っていた3人の女子大生が死亡しました。また日本でも、大阪万博の会場と駐車場間を運行していた自動運転バスが、2025年4月と7月に二度の自損事故を起こしたほか、8月には東京都八王子市でも自動運転バスの自損事故が発生し、乗客3人が軽傷を負いました。

このような事故だけでなく、そもそも自動運転は人間の運転と違ってノロノロとしか走らず目的地への時間は余分にかかるうえ、救急車や消防車に道を譲らないケースや、突然停止して大渋滞の原因になるケースなど様々なトラブルも数多く報告されています。また天候の変化や積雪などのイレギュラーや、システムエラーによって、まともに走れなくなる懸念もたびたび指摘されています。

◎日本国内の自動運転タクシー 5年後には営業開始?

まだまだ懸念は多い自動運転ですが、日本でも商業運行に向けた準備は着々と進んでおり、もはや外堀は埋まりつつあると言っても過言でありません。

2024年12月には、アメリカのウェイモが、タクシー会社の「日本交通」、アプリ配車企業の「GO」との連携を発表。2025年4月より、都内でタクシー乗務員がウェイモの車両を運転し、自動運転に向けた学習を積ませる取り組みが始まっており、業界紙の報道によれば、全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長は「自動運転タクシーの実用化は5年後」と語っています。

制度の面でも、様々な準備が進んでいます、2023年4月に施行された改正道路交通法によって、国内でもレベル4自動運転を認める仕組みが整備され、都道府県公安委員会が「特定自動運行実施者」を許可して運行を認めることとなりました。国土交通省は同じタイミングで、道路運送法施行規則を改定し、「特定自動運行旅客運送」として、タクシーやバスの事業者がレベル4の自動運転車を営業運行する枠組みを創設。ドライバーのいない車を遠隔などで操作するオペレーターを「特定自動運行保安員」と名付けています。バス・タクシー事業者は、自らが「特定自動運行実施者」の許可を受けて自動運転車を運行するだけでなく、外部の「特定自動運行実施者」に管理を委託して運行することも認められますが、管理を委託していた場合も旅客への責任、事故時の責任は第一にバス・タクシー事業者が負うことになっています。

それだけではなく、事故が起きた際の原因究明の方法、事故被害者への補償の在り方、自動運転車向けの保安基準の具体化などが、国土交通省の交通政策審議会「自動運転に関するワーキンググループ」で議論され、2025年5月30日には「中間とりまとめ」として、その方向性が決まりました。

我々ハイタク労働者は、いよいよ、自動運転を「近い将来に実現するもの」として真剣に対応を考えなければならない時にきています。

8.配車アプリへの規制

配車アプリは年々利用者を増やしています。需要が増えることは大いに歓迎すべきことですが、アプリを運営する企業(プラットフォーマー)に対し、ほとんどなんの規制もない現状を放置すれば、やがてハイタクの労働者や事業者は顧客を握ったプラットフォーマーの風下に立ち、下請けのような立場で生殺与奪を握られることにもなりかねません。

国交省の交通政策審議会では、自動運転の実施に向けた政策が話し合われる中で、タクシー配車アプリへの規制についても課題となりました。自動運転に関するワーキンググループが5月30日に発表した「中間とりまとめ」では、タクシー配車アプリの料金には旅行業法の規制しか適用されず、道路運送法の運賃・料金規制の対象外となっていることが課題として認識され、「タクシーが公共交通機関として果たす役割を鑑みれば、利用者が道路運送法のタクシーの運賃料金と区別が分かりにくいような手数料については、道路運送法の運賃・料金の規制の対象にすることも考えられる」、「自動運転タクシーにおいては配車アプリの利用が必須となることが見込まれることや、都市部を中心に配車アプリによる手配が徐々に増加していることも踏まえ、自動運転を含めたタクシーの運賃・料金制度と配車アプリに係る手数料との関係を整理し、必要な対応について検討する」との方針が示されました。

公正取引委員会も、この国交省内の議論とタイミングをあわせるように、2025年4月23日、「タクシー等配車アプリに関する実態調査」の報告書を公表。初めて配車アプリの運営会社に対し、独占禁止法に違反する行為や、公正で自由な競争のために望ましい行為についての見解を示しました。

その内容を見ると、優先配車料金の分配や、配車基準の明確化・透明化など、タクシー労働者にとってプラスと成り得る見解も示されています。公取委はアプリ会社だけが優先配車の料金の利益を得る現在の仕組みでは、タクシーの供給不足解消にはつながらないと批判し、「追加額が、タクシー等の運賃等としてタクシー事業者に支払われることが(中略)望ましい」との見解を記載。また、アプリ会社がタクシー会社に対し「優越的な地位」にある可能性に触れ、配車のマッチングで特定のタクシー会社を有利・不利に扱うような行為は独禁法に違反する可能性があると指摘して、基準を明確化し、透明性を向上するよう求めました。

9.タクシー需給調整の危機 トラック新法に学べ

規制緩和との長い闘いを経て、2009年にタクシー適正化・活性化特別措置法が成立し、特定地域での減休車がスタート。2013年には同法が改正され、公定幅運賃制度や準特定地域・特定地域の仕組みが構築されました。この両法は、需給調整と運賃規制の必要性について労使と行政の意見が一致し、与野党がともに取り組んだからこそ成立したものです。しかし、その風向きは変わりつつあります。

国土交通省は2025年1月28日「準特定地域におけるタクシー未稼働枠の暫定活用について」と題する通達を出し、本来は増車が制限される準特定地域において「暫定増車枠」という新たな制度をつくり、稼働率が平均より高いタクシー会社には、その枠内で増車を認めたのです。全国62カ所の準特定地域に1462台もの暫定増車の枠が配分されました。数台しか枠がない地域では申請がゼロのケースもありましたが、743台の増車枠が配分された東京・特別区武三交通圏では66社が増車を申請し、全ての枠が実際の増車につながってしまっています。

制度上、暫定増車が認められる期間は〝1年限定〟となっていますが、実際にはタクシー会社が増車した車両を1年で手放すことは考えられず、最初から期限の延長を想定しているとしか考えられません。

全自交労連は、この制度案が明らかになった時点で強く反対する意見を国交省に送りました。その効果もあってか、増車認可の基準に「令和2年以降の運賃改定後に、タクシー運転者の賃金を増額する措置を講じていること」という項目が追加されたことは、不幸中の幸いでしたが、業界や行政自らが改正特措法の趣旨を踏みにじり、規制を骨抜きにするような姿勢を取る限り、タクシーの需給調整の仕組み自体が壊れかねません。

その一方、トラック分野では労使が同じ方向を見て業界の適正化に取り組んでいます。2025年通常国会に議員立法として提出された、いわゆる「トラック新法」は日本保守党を除く、全ての与野党の賛成で6月4日に可決・成立しました。この法律は、適正運賃の収受やドライバーの待遇改善、多重下請けの制限、白トラの規制などを目的とした内容ですが、何より画期的な点は、トラックの事業許可を5年の更新制としたことです。違法・悪質な事業者は5年後に許可を更新されず、業界から退出することになりますので、確固たる強制力をもってトラック業界の適正化が進むことが期待されます。

この事業許可の更新制は、かつて民主党政権時代に我々が成立を目指し、あとわずかのところで実現しなかった「タクシー事業法案」の目玉でもありました。その際に使用者側で大きな役割を果たした全国ハイヤー・タクシー連合会の坂本克己最高顧問が、いまトラック協会の会長として、トラック新法を実現したのです。

10.地域公共交通としてのタクシー

① LPスタンドやタクシー専用車の維持

タクシー産業にとって欠かせないインフラであるLPガススタンドの廃業が加速しています。

充填に要する移動距離・時間の増加は、営収低下を招く問題となっており、さらに地域のスタンドがなくなれば、せっかくのタクシー専用車両が活用できず、ガソリン車(HV)への転換等に多大なコストがかかります。

LPガススタンドの側には、人手不足や後継者の不在、燃費の良いジャパンタクシーの普及に伴う売り上げ減少、燃料の転換が進む将来への不安など様々な要因があり、5年に一度約500万円をかけて行わなければならないタンクの開放検査のタイミングで廃業する事例が多いそうです。

東京都内ですら、10年前に74ヵ所あったLPガススタンドが51ヵ所にまで減少しました。

LPガススタンドの問題については、繰り返しハイタクフォーラムや交運労協を通じ国土交通省に訴えていますが、「スタンドの管轄は資源エネルギー庁です」という回答があるだけで有効な対策は望めません。

そんな中、全自交東京地連では、連合東京を通じた東京都への要請項目の中にLPガススタンドへの支援を盛り込む取り組みを今年から始めました。

各地域でインフラの維持のために自治体へ要望を行うことも重要な手段です。

また、タクシー専用車の将来も大きな課題です。

ジャパンタクシーの欠点である、車いす用スロープの横付けの問題は解消しないまま、国土交通省はシエンタの福祉仕様車を「準ユニバーサルデザインタクシー」と認定しましたが、今後はより洗練された新たなタクシー専用車の登場こそが待望されます。

② 交通空白解消本部 官民連携プラットフォーム

国土交通省は、2024年7月に大臣をトップとする「交通空白解消本部」を立ち上げました。

全国の自治体を運輸局の幹部が訪問して支援体制について相談し、タクシー・乗合タクシー・公共ライドシェア(自家用有償旅客運送)、日本版ライドシェア(自家用車活用事業)などのあらゆる手段を活用し、地域の足と観光の足の確保を図っています。

2025年度から27年度までの3年間を、交通空白の解消に向けた集中対策期間と定めて、535億円という多額の予算を投入(令和6年度補正予算326億円+令和7年度本予算209億円)。

その流れの中で、2024年11月には民間企業を巻き込んだ「『交通空白』解消・官民連携プラットフォーム」が設置され、2025年5月時点で、792自治体、104交通事業者、70団体、パートナー企業200社が参加しています。

国土交通省が交通空白の解消に向け、これだけ本腰を入れて取り組みを始めたことは、大いに歓迎すべきことです。

一方で、この巨額の予算が、形式的な実証実験やコンサルタント会社などに消費されるのではなく、地域公共交通の担い手のために使われ、利用者の役に立つよう、各地域でそれぞれに現場から声をあげていくことが大切です。

また、旧運輸省が設立したシンクタンク「運輸総合研究所」は、2025年7月、国への緊急提言として『地域交通制度の革新案』を発表。

9月には国土交通大臣に対し、「地域交通が公共財であり、社会資本であること」や「地域交通の確保責任主体は自治体であること」、「道路を活用した人の輸送に係るサービスを継続提供する事業は、全て自動車交通事業(仮称)であり、シンプルで明快な事業制度に再整理すること」、「国・自治体の公的負担の根拠は支援(補助)ではなく、委託への対価であること」などの考え方を、法制化するよう求めました。

今後は国交省内で立法に向けた検討が始まると考えられ、注目しなくてはなりません。

Ⅲ.労働条件改善に向けた取り組み

1.他産業に負けず物価高を上回る賃金

ハイタク産業は人々の生活の足を支える産業であり、ハイタク労働者はエッセンシャルワーカー(社会に不可欠な労働者)です。だからこそ、仕事の価値に見合った賃金が必要であり、他産業の平均を上回る賃金水準を目指します。2022年以降は毎年、物価と他産業の賃金が大幅に上がり続けているため「去年と同じ賃金」のままでは、生活は苦しくなり、職業の魅力は失われます。ハイタク産業で継続的な賃金向上を実現するためには、物価に連動した継続的な価格転嫁(運賃改定や迎車料金の創設・引き上げ)が必要です。

そして運賃改定を実施した地域では、増収分を確実に賃金に反映させるよう、労働分配率の改悪を許さない取り組みやA型賃金の固定給のベースアップが重要です。春闘でしっかりと適正な分配を確認し、その内容を労働協約として締結しましょう。労働協約に明記した内容は就業規則や個別の雇用契約を上回る効力をもちます。

一部の経営者は、運賃改定のタイミングを悪用して労働分配率の切り下げを画策し、2023春闘から2025春闘にかけて、全自交の職場でも各地で厳しい交渉が続きました。しかし、会社の経営状態すら開示せず、運賃改定のみを理由に賃金を改悪するような行為を許すことはできません。また迎車料金については、運賃と同じく営収に加算し歩合給を計算することが一般的ですが、迎車料金の収入を全て会社側が取り、乗務員には賞与等でわずかに分配する仕組みを導入しようとした会社もあり、警戒しなくてはなりません。

まずは納得のいかない不利益変更に対して断固とした姿勢を見せ、合意しないことが大切です。それでも事業者が賃下げを強行してきた際には、司法の場で不利益変更の合理性を争うことが可能ですが、まずは労使による交渉で賃金・労働条件を守り抜くことが重要です。

賃金制度によっては、運賃改定によって、労働者側の分配率が大きくなることもありえますが、事業者側が賃金制度の変更を主張してきた場合には、まず経営状況を開示させた上で、少なくとも労働分配率が悪化することのないよう交渉しなくてはなりません。職場を守るために、やむを得ず賃率等の変更に応じるとしても、労働条件の改善につながるような代案を引き出すなど、魅力的な労働条件の維持に向け、労使で真摯に協議を尽くすことが重要です。

そして、運賃改定による増収分に止まらず、本来の意味での賃上げに取り組みます。2025春闘でも多数の職場でB型賃金の歩合率アップやA型賃金の固定給部分のベースアップ、交通費の実費支給化や各種手当の創設・引き上げといった成果が出ています。

加えて、決済手数料やアプリ配車手数料、各種の割引など、本来は事業者が負担すべき経費を乗務員に負担させる制度の完全撤廃に取り組みます。タクシー特措法の附帯決議でも事業者に乗務員負担の廃止が求められており、国土交通省も改善を促していますが、いまだ残存していることは大きな問題です。危険運転や過重労働を誘発する累進歩合制はすでに厚生労働省が廃止を指示していますが、いまだ残存している職場もあり、根絶に取り組みます。

2.生活を保障できる安定的な賃金

安定的に長く働き続けられるよう、全自交労連は一貫して固定給を中心とした賃金体系を求め続けてきましたが、現実には退職金制度や定期昇給を備えた固定給+歩合給のA型賃金は減少し、実質的に完全歩合給のB型賃金へと転換が進んできました。歩合給主体の賃金は、営収が上昇している状況ではメリットがありますが、ひとたびコロナ禍やリーマンショックのような事態が生ずれば、再び大量離職を招いて供給不足を生じます。つまり「固定給と歩合給のバランスの取れた賃金」は産業全体の課題として捉えられるべきであり、最低賃金の大幅引き上げという状況も考慮すれば、固定給部分の引き上げには十分な合理性があります。

営収の低い地域では、真面目に働いても歩合給が最低賃金を割り込むこともありますが、そういった場合には自治体の公的支援を獲得してデマンドや乗合にも取り組み、固定給賃金を構築するなど、地域特性や事業形態に応じて最適な賃金体系を検討する必要があります。

3.働きやすい職場へ 長時間労働の是正

女性や若者をはじめ、全ての人が働きやすい職場環境をつくる取り組みが重要です。有給休暇の取得率を向上させ、育児や介護などの事情があっても働きやすいよう柔軟な勤務シフトを可能にし、産前産後休業、育児休業、介護休業の制度を整備して取得を後押しする必要があります。それらに即した休職制度を確立することも含め、職場復帰後に不利益な取り扱いがされないようにしなければなりません。

そして長時間労働の実態を改善する必要があります。特に若い世代の人たちはワークライフバランスを重視する傾向が強く、タクシー=長時間労働というイメージを払拭しなくてはなりません。労働時間規制や改善基準告示を遵守することは当然として、それ以上に労働時間・拘束時間を減らす取り組みは健康管理の上でも重要です。同時に労働時間の減少が賃金減少に直結しないよう、勤務シフトの見直しなど労働生産性の向上に取り組みます。

改善基準告示で、タクシーの休息期間は、日勤で「継続11時間を基本とし9時間を下回らない」、隔勤で「継続24時間を基本とし、22時間を下回らない」と定められていますが、全国ハイヤー・タクシー連合会は「分割休息制度」いわゆる「中抜き」をタクシーにも認めるよう国土交通省や厚生労働省に働きかけています。しかし、次の乗務までに睡眠、食事、入浴等をして心身を整えるためには9時間でも足りません。仮に9時間の休息を4時間と5時間に分割して、本当に体が休まるでしょうか。また、休息期間は、一切業務に関わらず、拘束されることもなく、職場を離れて自由に使える時間でなくてはなりませんが、本当に分割休息の時間を自由に過ごせるでしょうか。名ばかりの休息で実際には営業所で無線待機したり配車係をしたりして拘束されることが目に見えています。このような改悪を目論む動きは阻止しなくてはなりません。

ハイタク乗務員の平均年齢は2024年5月末時点で60.2歳であり、健康管理は非常に重要です。2025年度の国の予算では、事業用自動車の運転者が、SAS(睡眠時無呼吸症候群)、脳血管疾患、心疾患、視野障害等のスクリーニング検査費用の2分の1を補助する予算が確保されました。事業者に対し補助を活用した健康管理の推進を求めます。

そして健康管理を徹底した上で、高年齢者雇用安定法の目的に即して、少なくとも65歳までの定年延長と70歳までの雇用の確保を要求します。同時に正社員と有期雇用契約社員との間に不当な差別的取り扱いがある場合はこれを解消し、不均衡・不均等な労働条件の無い「同一労働・同一賃金」の推進に全力をあげます。

更に、衛生的で安全・安心な職場環境のため、施設や設備の改善も重要です。営業所におけるトイレ、休憩所、更衣室などの整備・改善や、雪の多い職場での除雪対策等を求めます。事業場外労働であるタクシーの特性から、自社の営業所外でも、休憩やトイレ、食事などを気兼ねなくできる設備を拡充することも必要です。

4.雇用の維持

従業員の雇用を守ることは企業の最も重要な社会的責務であり、労働組合は不当な解雇に対しては団結力を発揮し組合員の生活を守るために断固として闘います。

経営者は「会社の業績が悪いから」という理由で従業員を簡単に解雇できるわけではありません。一部の従業員に対して整理解雇を行い、他の従業員の雇用を維持して事業を継続する場合は、①人員整理の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③被解雇者選定の合理性、④解雇手続きの妥当性、これら「整理解雇の4要件」にすべて適合しないと解雇は無効となります。ただ単に解雇予告や予告手当を支払えば解雇する事が出来るという訳ではないのです。

会社の再建が難しく事業廃止によって全従業員を解雇する場合も「整理解雇の5要件」を満たす必要があります。職場がなくなる場合でも、未払い賃金等労働債権の確保、悪質な事業者への身売りの阻止、地域の全自交の仲間の職場への再就職あっせんなど、仲間を守るための行動に取り組みます。

また存続が難しい企業や経営者の意欲・能力に問題がある事例で、地域の事情によって再建が可能なケースでは、労働者自身が会社やタクシー車両を買い取り、自主経営として再出発する例もあります。全自交の自主経営の歴史は古く、1975年に自主経営として誕生した沖縄の共同交通では、車体に全自交マークを表示してほぼ半世紀、現在も地域住民の移動を支え続けています。また2000年以降、東北地連と新潟地連で12の自主経営が誕生し、2021年には愛媛地本で新たに1社の自主経営がスタートしました。様々な課題を乗り越えつつ、多くの会社が現在でも健全に営業を続けています。さらに、2025年5月に破産した秋田市のあさひ自動車においても、秋田地連の仲間が自主経営での再建を目指し、今まさに奮闘しています。

5.あらゆる差別を認めない

同じ職場で働く者は、皆仲間です。多様性を尊重して人種や国籍、性別、出自や思想・信条など全ての差別・偏見を職場から排除しなければなりません。

男女平等参画を推進するとともに、性的指向、性自認の違いを尊重してジェンダー平等を進めていく必要があります。

在留資格の特定技能に職業運転者が追加されたことから、今後、ハイヤー・タクシーの職場にも外国人労働者が増加することが予想されますが、全自交労連は外国人労働者の受け入れ緩和について反対はしません。同じ職場で働く仲間として迎え入れ、各職場で労働組合への組織化に向けた体制を整えていく必要があります。

一方で、事業者側が「安く使い捨てにできる労働力」という認識で外国人を採用し、十分な教育・訓練を行わず、事故増加や接客サービスの低下を招けば、日本のタクシーに対する利用者の信頼を損ないます。きちんとした受け入れ態勢と十分な教育・訓練、社内外で人種差別・偏見を取り払うための取り組みが不可欠です。

6.ハラスメント根絶

労働者の人権と心の健康を守るために、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントをはじめとした全てのハラスメント行為の根絶に取り組みます。乗客からのカスタマーハラスメント防止対策も重要です。

労働施策総合推進法等の改正(2025年6月11日公布)によって、カスタマーハラスメント対策と求職者に対するセクシャルハラスメント防止対策が事業者の義務に加わります(法の施行日は公布から1年半以内)。

交運労協の作成した「カスハラ防止ガイドライン」に基づき、事業者側には①業界全体でのカスハラ防止対策②各社でのカスハラ防止基本方針の策定③従業員のための相談体制整備、現場での安全確保と精神面への配慮④客観的な事実の把握と従業員まかせにせず従業員を悪者と決めつけない対応――などの対策を求めます。また2025年4月1日に施行された東京都のカスハラ防止条例も参考とし、国や自治体にカスハラを未然に防ぐための法令や条例の整備を求めていきます。

Ⅳ.政策面の取り組み方針

カスタマーハラスメント根絶には社会全体の意識改革が必要
〈交運労協 カスタマーハラスメント防止ガイドラインより抜粋〉

カスタマーハラスメントの問題は、利用者・顧客の意識、さらには社会全体の意識の改革の問題でもあります。本来は対等な関係であるべきサービスを提供する側と受ける側が、なぜ主従関係になってしまっているのでしょうか。アンケート調査によれば、加害者の性別は男性が86.4%、年齢は30代から60代で80.3%を占めており、加害者の多くは働く現役世代であると考えられます。加害者も被害者と同じ“労働者”であるにも関わらず、なぜ労働者同士の連帯感をかなぐり捨てて、“カスタマー”の立場を前面に出しながら、理不尽な行為に及ぶのでしょうか。それは、こうした行為に至る要因の多くが日常的な不満・ストレスのはけ口となっていることであり、加害者が働く殺伐とした労働現場が背景にあるのかもしれません。

その意味では、「働く者が互いに尊重し、共感しあえる社会を創る」ためには、まずは自らの労働現場を「働く者が互いに尊重し、共感しあえる職場」に創り変えていくことが求められているのではないでしょうか。カスタマーハラスメント防止の問題は、まさに職場からの団結と連帯の復権の問題であり、日本の労働組合運動の課題そのものでもあるのです

1.ライドシェア完全解禁の阻止

引き続き、ライドシェアとの闘いを政策闘争の最優先課題と位置づけ、以下の取り組みを行います。

◆ ライドシェア新法、ライドシェア合法化絶対阻止

◆ 日本版ライドシェアの終了基準明確化、タクシー不足が解消した地域での即時終了

◆ 都市部、交通空白地、観光地ごとの課題に沿ったタクシー供給対策の推進

◆ ハイヤー・タクシーの安全・安心・品質の維持向上

なお、自家用有償旅客運送(公共ライドシェア)については、タクシーやバスではカバーできない地域において、非営利を前提に運行する限り、反対ではありません。やむなく自家用有償旅客運送の運行を行う場合は、タクシー会社が担う「事業者協力型有償運送」の制度を活用することも選択肢の一つです。一方で、営利目的の企業による運行や、地域公共交通会議の同意を得ずに自治体の首長の独断で実施される持続性のない運行等については、既存の地域公共交通を破壊するおそれがあるため反対します。

2.公共を担う職業に相応しい賃金 価格転嫁と適正分配の推進

タクシーは公共交通機関であり、そこで働くハイタク労働者はエッセンシャルワーカー(社会に不可欠な労働者)です。同じく自動車教習所の指導員・検定員も地域の交通安全センターとしての役割を果たすエッセンシャルワーカーです。

仕事の価値、社会的価値に相応しい賃金・労働条件を獲得するためにあらゆる運動に取り組みます。

特に賃上げの原資を獲得するための価格転嫁(運賃・迎車料金・教習料金)、そして適正な分配の実現に取り組みます。

3.自動運転タクシーへの対応

自動運転は現時点では、まだまだ不完全な技術であり、安全性に問題があります。一方で、世界中で自動運転には莫大な投資が行われ技術は日進月歩で進化しています。我々ハイタク労働者には、遠くない将来に自動運転タクシーが公道を走り出すことへの覚悟と対策が必要です。

19世紀における機械打ちこわし運動「ラッダイト運動」が成功しなかったように、自動運転そのものの導入を阻止する闘いは勝算が薄いと言わざるを得ません。導入は避けられないものと認識しつつ、次の3つの目標を全自交労連の自動運転対応方針とすることを提案します。

自動運転への対応方針(案)

①【短期目標】

自動運転タクシー実用化後も、ハイヤー・タクシー・自動車教習所労働者の、雇用と賃金を守る。自動運転タクシーと有人タクシーの間で、運賃や台数を含めて「公正な競争」を成り立たせる。

②【中期目標】

若い世代の仲間、これからハイヤー・タクシー・自動車教習所業産業に就職する仲間の将来を保証し、不安なく働き続けられるようにし、生涯職業としての魅力を守る。

③【長期目標】

50年、100年後には殆どのハイヤー・タクシーが無人運転になるとしても、労働者が誰一人取り残されることのないよう、長期間でのソフトランディング「公正な移行」を実現する。

目標を達成するためにカギとなるのは「仮に完全自動運転が実現したとしても、人の運転するタクシー・バス・トラックをなくすことはできない」という事実を社会や政治・行政に認識させることです。

もし全ての移動手段が「無人化」されてしまえば、災害、大雨や積雪、自動運転システムのバグやエラー、サイバーテロ等々の事態が生じた際に、人流・物流が完全に麻痺することになります。社会のシステム全体の、強靭性や冗長性(リダンダンシー)※1を確保するためには、コスト面で割高だったとしても、一定数の有人バス・タクシー・トラックを残すことが必要不可欠であり、そのための制度・政策を今から整えていく必要があります。

自動運転タクシー1台のコストは約2000万円と言われ、コスト面だけなら1年半ほども稼働すれば、タクシーの人件費分をまかなうことができてしまいます(タクシー乗務員の人件費が法定福利費を含め年間600万円と仮定し、1台を2.5人で稼働させているとすれば、タクシー1台の運行に係る年間人件費は1500万円)。タクシー会社の経営者にとっては魅力的に見えるかもしれませんが、そもそも日本の法人タクシーは運行管理と労務管理に責任を持ち、安全・安心を担保することが最大の存在意義です。人間のドライバーが存在しないならば、無人タクシーの運行主体がプラットフォーマーやタクシー事業者以外の企業等となってもおかしくはありません。タクシー会社とタクシー乗務員は切っても切り離せない存在であることを自覚し、労使で自動運転タクシーへの対応を協議していく必要があります。

また、現行のタクシー運賃の原価は約7割が人件費であり、タクシー台数の規制も乗務員の待遇改善が目的です。その点を考慮すれば、無人タクシーに現行の運賃・台数規制を適用できるかどうかわかりません。仮に運賃の安い無人タクシーが大量に走るようになれば、歩合給主体の賃金体系は機能しません。乗務員の賃金を固定給主体にし、有人タクシーと無人タクシーの売上を併せて賃金原資を作るといった検討も必要です。

今後、自動運転タクシーがいつどこで実用化され、どのような需要を有人ハイヤー・タクシーから奪うのか、有人ハイヤー・タクシーにこそ求められる需要とは何か、を全自交労連として研究し、乗務員の賃金と雇用を守り、将来を保証するための政策運動を追及します。

また、50年・100年先の未来を見据え、誰も取り残されない「公正な移行」を実現するための長期的な検討にも取り組みます。石炭から石油への転換期においては、1959年に成立した「炭鉱離職者臨時措置法」に基づき2002年に廃止となるまで43年にわたって、誰も取り残さないための対策が実施されたのです。ピーク時の日本の炭鉱労働者数は約35万人でしたが、現在、タクシー・バス・トラック産業では120万人を超えるドライバーが働いています。このような前例を踏まえ、「AI時代の公正な移行」の在り方を検討します。

※1「冗長性」とは防災計画等でよく用いられる用語。システムや設備をあえて多重化したり、余剰・あそびを設けておくことで、一部の障害が全体の機能不全にならないようにすること。

4.プラットフォーマーの規制

プラットフォーマーによって現場で働く労働者や現場の経営者が不当に搾取される未来を決して許してはなりません。しかし、顧客情報を握り、配車の仕組みをAIで管理するプラットフォーマーに対抗するためには行政による規制が不可欠です。新たな規制の策定に向けた運動を強化します。

5.タクシーへの公助獲得とインフラの維持

交通空白を解消し、住民の移動の足・移動する権利を守らなくてはなりません。その対策の中で、様々な新たな取り組みが実施されようとしていますが、まず最優先されるべきことは、いまあるタクシー・鉄道・バスという陸上の公共交通をしっかりと守り抜くことです。

国や自治体に対し

  • 地域の移動を支える現場の労働者への直接支援
  • 地域の移動を支える事業者への支援
  • 経済的な事情を抱える利用者や、交通弱者、免許返納した高齢者等のタクシー利用負担を軽減するための支援

等の公助拡大を求め、タクシーを中心とした持続可能なくらしの足の確立を目指します。

6.再び、タクシー事業法の追求

台数と運賃の適正なバランスは、ハイタク産業の肝です。この規制をないがしろにすることは、再びタクシー規制緩和の悲劇を繰り返すことを意味し、利用者の安全・安心とハイタク労働者の生活を破壊します。

ハイヤー・タクシーの適正化・活性化を完遂するために、再びタクシー事業法の成立を追い求めます。トラック業界で事業更新制を盛り込んだトラック新法が成立したことを見ても、決して不可能なことではありません。しかしタクシー事業法の実現のためには再び政権交代を実現し、我々労働者の発言力を強化することが不可欠です。

Ⅵ.ハイヤーの運動方針

1.ハイヤーの近況

2020年 (当初予定) のオリンピック・パラリンピック開催地が東京に決定した2013年以降、特に都心部におけるインバウンド対策が急務となり、国交省は2014年の国交省告示によりハイヤーを「都市型ハイヤー」と「その他ハイヤー」とに区分し、外国人観光客やビジネスによる移動需要に「都市型ハイヤー」で対応できるようにしました。その際、タクシーと競合の可能性のある「その他ハイヤー」は改正タク特措法の適用を受け新規参入を原則認められない事となっています。

この告示以降、東京オリンピック・パラリンピックの開催や訪日観光客のインバウンド需要の増加を見込み、既存事業者のみならず「都市型ハイヤー」として新規参入の許可申請が増加しました。結果として東京特別区・武三地区を中心に事業者数と車両数が共に増加し、外国人経営者向けに事業認可申請を代行する業者がネットを中心に広告宣伝されるなどもあり、空港や主要駅、夜間の繁華街など都内の各地で一見してそれと分かる車両が現場で見受けられるようになってきました。

しかし、一部の報道によれば、それらの中には『名義貸し』や二種免許を持たない運転者による運行等の違法行為が行なわれている可能性もあり、背景には『外免切替制度』の濫用による外国人運転者の増加も指摘されています。『外免切替制度』の濫用については国会の場でもその問題点が指摘され、警察庁は道路交通法の一部を改正し申請時に住民票の提出を義務付ける等、観光等の短期滞在者では免許を取得できないようにするとともに、知識・技能確認においても問題数を10問から50問に増やし、審査基準を70%以上から90%以上に引き上げるといった外免切替制度の厳格化を図りました。

また、全自交としては「都市型ハイヤー」に対する規制の必要性を訴えていますが、5月には中国運輸局が事業者団体の要望に応え、岡山県全域において「都市型ハイヤー」の営業を認めました。

ハイヤー需要の回復により営業収入自体は回復傾向にありますが、ダンピングや燃料費高騰による収益性の低下が続き、ハイヤーにおいても運賃改定の機運が高まりました。国交省が運賃改定の申請があった場合の要否判定に入る申請率の基準を通達により改正し7割から5割としたこともあり、従来、事業者数の増加により困難となっていたハイヤーの運賃改定が昨年、名古屋交通圏と東京特別区・武三地区で認可されました。

運賃改定による増収効果がハイヤー運転者の労働条件改善へ向けた一歩となる一方で、ハイヤーから白ナンバーの請負業(自家用自動車管理業)にシフトしている顧客も多く、ドライバーの労働実態の把握と、それに対する適正な金額による運送契約が必要とされています。

2.ハイヤーの課題

コロナ感染状況の平坦化に伴う人流の回復により、インバウンドやイベント開催によるハイヤー需要が回復しましたが、コロナ禍においてタクシーと同様に多くの乗務員が業界から去ってしまいました。今後のハイヤー需要に充分に応えていくためには、早急な要員の回復は必須です。

また、いわゆる「2024年問題」は物流業界に限った話では決してありませんでした。5年間の猶予期間が終わり、2024年4月1日から労働基準法で定める時間外労働の上限規制(月45時間、年360時間、特別条項付き36協定締結 年960時間)が適用され、改善基準告示においてもその遵守が定められています。

乗務員の健康を守り、新たな担い手を確保するためにも事業者に対し、これら労働関連法規の遵守だけでなく更なる長時間労働の是正を求めていく必要があります。

しかし、これまで長時間労働に依存した賃金体系の事業者が多いのも事実でした。それ故、時間外労働が減少してもそれが賃金の低下に繋がらない、固定給部分に厚みをもった魅力ある賃金体系を構築し、時間外労働規制が更なる人材の流出ではなく、新たな雇用の創出となるよう労使が一体となった取組みがこれまでも各単位で進められてきました。

現状のハイヤーの賃金体系は、緑ナンバー登録の営業車、顧客先の企業に入る請負契約、タクシーの賃金体系の大きく3種類に分けられます。多種多様な賃金体系への対応は個社個社の議論が中心と成らざるを得ませんが、全自交としての統一方針である、年間一時金・退職金加算等も含めたトータル的な賃金の上増しを今後も求めていかねればなりません。

そして、乗務員の高齢化に伴い健康管理体制の充実を図る必要性はますます増加しています。自動車運転業務において課題となっている脳・心臓疾患から乗務員を守るため、労働時間管理はもちろんの事、国交省が「事業用自動車の運転者の健康管理に係るマニュアル」及び「自動車運送事業者における心臓疾患・大血管疾患対策ガイドライン」の中で推奨項目として示している各種検査の実施は運転者だけでなく利用者の双方を守るためにも必要な事ですが、事業者にとっては助成制度を利用したとしても検査費用が大きな負担となることから、検査を受けることが出来ている運転者はまだまだ少数です。

また、ハイヤーという仕事を生涯職業として確立するためには、65歳までの継続雇用と70歳までの勤務延長者への対応も必要です。働きやすい勤務シフトの構築など、勤務延長への取組みを実践し、「同一労働同一賃金」の実現により持続可能な継続雇用制度の確立も目指さなければなりません。

ハイヤー乗務員の待遇改善には更なる事業採算性の向上が求められます。しかし、我々を取り巻く環境としてはウクライナ問題や特に中東産油国の政情不安からなる原油高により燃料費は高騰し、それに伴う物価高から様々な経営コストが増大しています。また、米国主導による関税協議が貿易立国である日本経済の先行き不透明感を増加させています。

これら経営コストやリスクの増大が労働者の待遇に悪い影響を与える事の無いよう、事業者と対峙していかなくてはなりません。

加えて自動運転といった新たな技術革新により生み出される輸送手段や、ライドシェアという規制緩和が、これまで安全性や快適性の担保を重視してきた我々を脅かす存在になるかもしれません。ハイタク業界が被るかもしれない影響に警戒をしつつ、自動運転に決して負けることの無い“有人ハイヤー”としての存在価値を更に高め、日本にはライドシェアなど必要ないと利用者に認識されるために、今後もお客様に選び続けられる存在でなくてはなりません。そのためにも忘れてはならないのが更なる安全輸送と高品質なサービス提供への取組みです。事故の削減には引き続き組合員に対する安全輸送への意識向上が必要となります。ほとんどの事故の原因は目視不足等による一瞬の不注意です。利用者への安全を担保し、労働条件を改善するための原資を確保するためにも一瞬の不注意による事故はさらに減らさなくていけません。継続して労使で事故防止に取り組んでいく必要があります。そしてハイクラスなサービス提供への取り組みにより顧客満足度を更に高めていくことが、ハイヤーという業態自体の社会的位置付けも高め、そこで働く仲間にとって更に働きがいある職業となっていく好循環を生み出すための取り組みが必要です。

3.ハイヤーの政策要求

タクシーでは全国において適切な価格転嫁としての運賃改定の実施が継続的に進められています。

運賃改定の主たる目的である「労働条件の改善による要員不足の解消」はハイヤーにおいても大きな課題であります。事業者数の増加から困難な状況となっていたハイヤーの運賃改定について、全自交は仲間の声から7割ルールの見直しを国交省に求めてきました。その結果、国交省はハイヤー運賃改定の認可申請の審査基準を5割に緩和するとの通達を2023年6月1日付けで出しました。その結果、前述したように昨年、東京と名古屋でハイヤーの運賃改定が実現しました。

今後は他の地域でも運賃改定が実施されるよう、この結果を各地での運賃改定の流れに結び付け、ハイヤー乗務員の待遇改善に繋げなければなりません。

また、今後も続くと思われる燃料費の高騰に対する緩和策の継続は、ようやく回復の兆しを見せてきたハイヤー業界を、更に回復・成長させるためには絶対に欠かせません。GXの取組みとして電気自動車等を導入する際には、車両購入にかかる費用だけでなく、負担が増加する維持費についても行政による補助を求め、中長期にわたって経営の負担とならないような施策を求めていきます。

乗務員の健康管理・維持に必要な検査は、まだまだ高額なものです。脳MRI検査の費用補助、新型コロナを始めとする各種感染症から乗務員と利用者を守るための設備導入費補助等の更なる拡充を行政に求めていきます。

また、2023年11月、公正取引委員会が示した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は、ハイタク事業者が展開する自家用自動車管理業における請負契約にも適用されますが、まだまだその目的である労務費の適正な価格転嫁に結びついているとは言えません。あくまでも指針であり「下請法」等における罰則規定がそのまま順応されないようでは、発注元の意識を変えるまでには至りません。全自交として、この指針がハイヤーの仲間の労働条件改善に結びつく適正な請負金額の実現に向けて、指針から逸脱するような契約や契約段階での手続き等に対する罰則規定を含め、法整備されるよう他の産別組織との連携を図りながら求めていきます。

そしてライドシェアの問題は決してタクシーだけの問題ではありません。万が一「ライドシェア新法」なるものが成立してしまえば、その悪影響は間違いなくハイヤーにも起こります。「都市型ハイヤー」ですら需給調整のガバナンスが効かない状況がある中、新法によるライドシェア解禁は、タクシー同様、ハイヤー業界の崩壊に繋がります。本年、7月に実施された参議院議員通常選挙の結果、自公政権は参議院においても“少数与党”となりましたが、今後の政局次第では「ライドシェア新法」成立を推し進める勢力が台頭してくることも考えられます。全自交労連として推薦し全力で支援した、もりや たかしさんは惜敗し公共交通が抱える課題解決を活動の中心とする唯一の存在と言える議員を失いました。そのような状況において今後、我々の唱える政策を実現させるためには労働者の視点で政策を考える関係協力議員・政党、友好労働団体や事業者団体とも連携し、輸送の安全とハイタク業界の将来を守るため全自交労連の仲間が一丸となり「都市型ハイヤー」に対する規制と共に何としても「ライドシェア新法」の成立を阻止しなければなりません。

加えて、ハイタク事業者がハイヤーの一環として事業展開する自家用自動車管理業においては二種免許取得者による運行であることが大きな要素であり、安全運行からなる顧客の安心感を高めていることからも、タクシー同様に二種免許の重要性を堅持していかなければなりません。

そして、道路運送法の改正もなされ、近い将来、日本の社会でも一般的になるであろう自動運転への対応については、有償旅客輸送における事業用車両として導入される場合の安全性の検証はもちろん、“無人”でありながらもハイヤー・自家用自動車管理業としての位置づけの確保が重要となります。道路運送法改正により特定自動運行においては旅客運送事業者の責任の下、運行状態の監視や非常時の対応等を外部に委託する事が可能となりました。これが将来的なハイタク事業者不要論につながることの無いよう、自動運転であっても運行管理や車両管理は平常時から重要であり、利用者の安全が担保されるためには旅客運送の認可を受けた事業者が展開するべきであることを主張していきます。

また、自動車と車道を共用する自転車や電動キックボードの問題については、警察の厳格な取り締まりや、今後の状況によって規制の強化を求め秩序の守られた道路環境の構築を求めていく事が必要です。

尚、これら全ての政策課題の実行、解決のためには連合や交運労協、特に交通運輸産業に関わる産別組織との連携も重要であり、全自交労連と普段から協力関係にある各級議員との関係をより深めながら政策実現に努めていかなければなりません。

4.ハイヤー労組の組織拡大

ハイヤーの営業区域(北海道、東京、京浜、埼玉、名古屋、大阪、京都、神戸、奈良、広島、岡山、沖縄 各地区)の中には全自交の仲間が存在する区域があります。しかし、これまでは関東の加盟組織を中心に親睦・意見交流を重ねてきました。全自交加盟の組織にはハイヤーに専属的に従事する組合員だけでなく、ハイヤーとタクシーを兼務する組合員が存在する組織があります。今後はそれらの実態を調査・把握をし、その上で全自交未加盟組織や未組織労働者を含めた組織拡大の数値的目標の検討を行います。

また、オンライン会議等を活用することで、ハイヤー・自家用自動車管理業務を展開している仲間との意見交換を行い、ハイヤー部会を通じて組合加入、結成を呼びかけ全自交への結集を呼びかけていきます。

Ⅴ.組織課題 全自交運動を未来につなぐために

現在、全自交労連に加盟する複数の地方組織が存亡の危機に立っています。2023年5月に福井地連が解散届けを提出して休会扱いとなり、2025年2月には福岡地連が解散、同年5月には岡山地本が解散。わずか3年の間に3つの地方組織が歴史に幕を下ろしました。また、組合員が10人に満たない地連本や、事務所を委員長の自宅に置き組織を維持している地連本、労働組合運動に熱い思いを持つ役員の自己犠牲と献身によって運営を成り立たせている地連本も複数あり、このままではさらなる減少は避けられません。

言うまでもなく労働組合は組合員の為にある組織です。現場の組合員の賃金や労働条件が大きく改善し、組合員が「もう必要ない」と判断するのであれば、労働組合がなくなることは仕方がないことかもしれません。しかし現実は違います。解散を選択した地連本や単組は後継者の不在、組合員の減少、財政問題、職場の喪失等のやむを得ない事情で、解散という苦渋の決断に至りました。

労働組合が解散すれば、長年にわたり職場で積み重ねられてきた労働協約や労使間の合意は無効となり賃金・労働条件は悪化。不当な解雇や賃下げを防ぐための防波堤も失われます。さらに全自交の地方組織が失われることは、地域内でハイタク自教の政策制度が議論される際に、労働者の立場を代表し代弁する存在がいなくなってしまうことを意味します。

現在、ハイタク・自教労働者の賃金・労働条件はまだまだ全産業の平均に劣り、さらに格差は拡大しています。この状況下で、全自交労連には国内最大のハイタク産別労組として、運動の灯を絶やさず、未来へとつなげていく責任があります。持続可能な全自交運動の構築に向け、次世代の担い手の育成・財政の健全化・組織拡大の3つの課題に取り組みます。

1.次世代育成と学習活動の強化

(1)次世代の担い手の育成

「委員長・書記長を引き受ける若手がいない」ことは全国の大多数の組織に共通する課題です。組合員がいる状態でも、役員の担い手がいないため、解散・活動休止を選択した単組は少なくありません。最大の原因は職場全体の高齢化ですが、近年は営収環境の改善により若い世代の職場加入も増えつつあります。この機を逃さず、労働組合の価値と意義を理解し、責任感をもって携わることができる若手役員を育てていくことが喫緊の課題です。

若手を対象とした学習会や懇親会の実施、同じ世代間での交流の場の設定、固い行事だけでなくレクリエーションやスポーツによる団結の強化などの対策が考えられますが、全自交労連本部として財政面の制約を踏まえつつ、地連・地本、ブロックをどのように支援できるか検討します。

(2)学習活動の強化

また学習の内容としては、単組における労働協約の内容の確認、賃金計算等の具体的な知識、団体交渉の戦術、ハイタク自教の制度に関する知識等の実践的な分野に加え、労働組合のもつ法的な権限や、有効性、価値について学ぶことも大切です。

戦前から激しい弾圧を受けながら労働運動が闘われ、戦後において、労働者が団結して労働組合を結成し、要求をかかげて経営者と対等に交渉を行い、時にはストライキを構えて要求を実現する活動が労働者の基本的な権利として認められたことは画期的なことでした。労働基本権を武器に労働協約を締結し、最低ラインを定めた労働基準法を上回る労働条件を獲得していくことこそ労働組合の役割であり、今では当たり前のように思われる有給休暇や最低賃金制度、社会保障制度などの権利も、労働者の長く激しい闘いの中で実現した権利であることを確認していかなければなりません。

2.財政健全化

長年の組合員の減少傾向により、全自交労連本部、また地連・地本の財政は厳しい状況にありますが、今後も、先人たちの築き上げてきた全自交運動を継続し、全自交の旗に集う全ての労働者の生活と権利を守り抜くため、財政の健全化に取り組みます。

全自交労連は、財政検討委員会の答申に基づき、2023年度、委員長・副委員長手当の大幅減額や、中央委員会・夏季セミナーの都内1日開催といった支出削減に取り組み、2024年度も前年度の対策を継続するとともに、全ての四役会と年間3回分の中央執行委員会の完全オンライン開催等の対策を実施してきました。さらには東京地連加盟の大手組合をはじめとした各加盟組織の特段の協力により、24年度決算においては一定の成果が見込まれています。

しかしながら、いまだ本部の一般会計のキャッシュフローは一部地連本からの加盟費の前納で成り立っている現実があり、財政再建は道半ばです。2025年度予算案においては、①一般会計において確保する繰越金②組織支援対策基金の積立額③会館積立基金への積立額に関し、具体的な数値目標を設定します。

なお中執会議のオンライン化は、各地連本の協力により、軌道に乗りつつあり、当面はこの対策を継続するとともに、将来的には中執を選出していない地連本の傍聴参加等、意思疎通の改善に生かすことも検討します。

また、2026年1月に迫った連合中央会費制度移行への対応として、「連合会費会計」の設置などの準備を進めるとともに、移行が円滑に進むよう地連・地本の支援に取り組みます。

3.組織拡大と教宣活動強化

物価が高騰し賃上げの必要性が明らかな今こそ、労働組合への期待感は高まっています。職場内の組織率向上や、未組織労働者の組織化に向け、有効かつ具体的な取り組みを行わなくてはなりません。

(1)組織拡大

◎組織率の向上

労働組合の交渉力を担保するのは数の力、組織率です。25春闘で勝ち取った成果や、労働組合があるからこそ守り抜いてこられた労働条件を職場内で強力にアピールしなくてはなりません。また、ライドシェア完全解禁阻止の闘い▽運賃改定の実現に向けた闘い▽規制緩和との闘い▽国や自治体との交渉内容など、全自交労連が取り組んできた交通政策闘争の成果を強調し、労働者が団結することの大切さを伝えることも重要です。あわせて「全労済<こくみん共済coop>」や「労働金庫」など、労働者の相互連帯によるメリットを組織率の向上に生かし、全自交が取り組む「ハンドル共済」への加入を推進します。

組織率の向上を果たし過半数労働組合の維持・拡大への取り組みを推進する事が重要です。労働協約・組合規約に定められた組合員の範囲、ショップ制等の状況を確認し組織率の向上を果たす為の取り組みを全自交本部・地連本・単組・分会等が連携・協力し推進します。

◎新規組合の加入・結成

全自交労連本部や地連・地本の事務所には、頻繁にハイタク労働者から労働相談・生活相談が寄せられ、組織拡大の街宣行動等では職場の不満や不条理を訴える多くの声が組合役員に寄せられます。一方でこれらの相談を、新たな組合の結成や、全自交への加入につなげることは容易ではありません。中央・地方において連合オルガナイザーとも連携し、労働者からの相談に親身になって対応しながら労働組合の結成、そして全自交への加盟が問題の解決に必要であることを伝えていきます。

ゼロから一をつくるためには多くの労力が必要ですが、2025年7月8日には、全自交広島地方本部が再建大会を開き、4つの分会を新規に立ち上げるという明るい出来事もありました。各地域での新規組合立ち上げや全自交への加入をサポートするための体制構築に取り組みます。

◎自主経営

倒産・廃業した会社で、組合員が自らの手で会社を再建・経営し雇用を維持してきた「自主経営」の取り組みは全自交の運動として特筆すべきものです。今も東北地連を中心に10社以上の全自交・自主経営企業が営業を続けており、自主経営企業間の連携を維持・発展することに加え、今後あらたに生じる事案において本部の厳しい財政状況も踏まえて取り得る対策を検討する必要があります。

◎ジェンダー平等の推進 女性組合員・役員の増強

女性が働きやすい職場を実現するためにも、労働組合の女性組合員、そして役員を増強することは喫緊の課題です。連合の方針に基づき、女性組合員の声を組織運営や要求内容に反映させられる体制づくりに取り組みます。

(2)教宣活動

タイムリーな情報の発信を強化するため、2022年より全自交本部は、各地連本にFAXで最新ニュース「全自交NEWS」を発行しています。引き続き、機関紙「全自交しんぶん」の内容充実に努めるとともに、情報伝達や教宣活動の強化を図ります。またSNSの活用や、ホームページに掲載する内容の充実などに取り組みます。

Ⅶ.自動車教習所の運動方針

自動車教習所は、社会的価値が高く必要不可欠な公共性のある産業です。しかし、エッセンシャルワーカーである自教労働者の賃金は低い水準に抑え込まれており、業務の負担と価値に見合った適正な対価が必要です。

教習の質を担保するためにも、正社員としての安定した立場と十分な賃金を確保し、長時間労働をなくし、同時に定年延長や一定年齢までの安定雇用を実現して、指導業務に集中できる労働条件を確立することが求められます。

また少子化の中で教習生が減少し続ける状況においても、労働条件改善の原資を確保できるよう教習料金等の価格転嫁は欠かせません。労働者の力を合わせダンピング阻止や、国・自治体による教習所への支援の実現など、政策運動にも取り組みます。

1.自動車教習所を取り巻く情勢

《自教労働者の賃金・労働条件》

自教職場でも少しずつ賃上げは進んでいますが、他産業の賃上げ幅の方がはるかに大きく、賃金格差は拡大しています。

自治労全国一般評議会の自動車教習所協議会が毎年実施し、全自交労連自動車教習所部会が協力している「賃金労働条件調査」の2024年版(36職場が回答)によれば、自動車教習所指導員の所定内賃金の平均は月額279,586円で、一時金妥結額の平均は24年夏が348,137円、23年冬が378,335円でした。

厚生労働省・賃金構造基本統計調査によれば、2024年の全産業平均賃金は、月額(2024年6月)の所定内賃金が359,600円、年間の一時金・賞与(2023年)が954,700円でしたから、自動車教習所指導員は全産業の平均と比べて、月例賃金が80,014円も低く、年間の一時金・賞与も234,228円低い状態です。年収ベースでは約120万円の賃金格差となります。

2024年の教習指導員数は28,431人となり、10年前と比べ3,694人減少。技能検定員数は18,041人で、やはり10年前と比べ831人減少しました。いま多くの自教職場で、人材不足が問題となっていますが、全産業との賃金格差を埋めない限り問題は解決しません。なによりも、社会に不可欠なエッセンシャルワーカーとして働く自教労働者が、全産業平均より賃金が低いという状況を放置するわけにはいきません。

また若い人ほど、ワークライフバランスを大切にし、きちんと休める環境を求める傾向が各種統計で明らかになっています。自動車教習所では、学校の長期休暇などの繁忙期に連続勤務や長時間労働を余儀なくされる実態がありますが、長時間労働の是正や休みを取りやすい環境整備に努め、労働者の健康と生活が保たれる魅力的な職場にしていくことが、人材獲得のためにも欠かせません。

《自教職場の2025春闘》

全自交に加盟する自教労組は、粘り強く春季生活闘争を闘い、ベースアップなどの賃上げを勝ち取ってきましたが、25春闘ではさらに大きな改善が実現しています。

秋田地連の太平自動車学校労働組合では、最大1万1000円のベースアップを獲得。現在の基本給が低い人ほどベア額が大きくなる改定で職場内の賃金差額を縮める内容でした。

また、新潟地連の新井自動車学校労働組合では、24春闘に続き25春闘でも地域の教習所の労働者が団結し、統一して経営者にベースアップ1万円の要求を行いました。今春闘で地域統一ベアは実現しませんでしたが、新井自動学校労組は、昨年を500円上回る3,500円のベアを獲得しました。

愛知地連の愛知自動車学校労働組合・江南分会は、経営譲渡によって、事業者が変わった直後の困難な状況下においても春闘交渉を行い、月例給のベア2,000円と年間臨時金の100,000円アップという成果を挙げました。

このように、各加盟単組の奮闘が目立つ春闘ではありましたが、連合の春闘の平均妥結額は従業員99人以下の企業に絞っても10,922円(4.36%)となっています。他産業との賃金格差解消するためには、この水準を超える賃上げが必要なことは間違いありません。

《価格転嫁の状況》

◆教習料金の平均値

普通MT
定価
普通MT
最低価格
合宿教習MT
繁忙期
合宿教習MT
閑散期
2024年 333,257円 304,687円 390,432円 279,746円
2023年 326,909円 294,448円 372,238円 264,888円
2022年 320,217円 287,707円 359,426円 255,638円
2021年 318,042円 285,773円 354,472円 262,648円

※自治労全国一般自教労協の「賃金労働条件調査」の回答より。各年で回答した職場には差異があるため、必ずしも単純比較できないことに注意。

長年、自動車教習所業界には、ダンピングが横行し、指導員・検定員の賃金に悪影響を及ぼしてきました。近年では、少しずつ価格転嫁は進んでいますが、まだ不十分です。

MT定価で比較した場合、教習料金の値上げ率は4年で4.78%でしたが、この間に最低賃金の全国加重平均は930円から1,055円へと13.44%増加しており、消費者物価指数の総合値は2020年を100ポイントとした場合、2024年10月時点で109.5ポイントになっています。指導員・検定員が他産業を上回る賃金を得られるよう、さらなる価格転嫁を進めなければなりません。

全自交の仲間からは「全国一律で、強制力のある最低価格を設定すべきだ」という声も上がっています。実現は簡単ではありませんが、行政が適正価格を算定し公表するなど、政策・制度として価格転嫁を進めることが求められます。

同時に重要なことは、悪質なダンピング事業者の撲滅です。例えば岡山県では、安売りや組合潰しを強行する自動車教習所がのさばってきた結果、地域全体の教習料金が非常に安価な水準となり、2024年12月現在、岡山県交通安全協会の運営する指定自教のホームページにすら「学生トクトクキャンペーン普通MT総額249,900円」の文字が躍っています。適正な賃金を確保できないダンピング料金は一刻も早く撲滅しなければなりません。

《教習生の減少 教習所の減少や経営権譲渡》

少子化により、普通車の免許取得が可能となる18歳人口は1992年の2,049,000人をピークとして減少し続けており、リクルート総研の予想では2035年には約97万人にまで低下する見通しです。当然、自動車教習所の教習生の数も減り続けてきました。例外的に、コロナ禍では大学等の休校・リモート授業の増加などの影響で教習生が増加し、2021年の卒業者数はこの10年間で最多の1,723,923人を記録しましたが、22年以降は再び減少に転じ、2024年の卒業者数は1,508,109人と約22万人も減少。この10年で最少の卒業者数に落ち込んでいます。

また指導員と教習生の関係も昔とは異なってきており、指導員が強い口調で注意すると即座に教習生やその保護者からのクレームが入ることが多くなりました。指導員は安全教育の使命と〝顧客満足〟の板挟みとなって精神的負荷が増しています。

教習生の減少と連動し、指定自動車教習所の数も減少。2024年は1,288校となり、10年前と比べ51校減少しました。教習所間で経営権を譲渡する動きもあり、全自交の加盟組合の職場でも事業譲渡の事案が発生しましたが、たとえ経営者が変わっても、労働組合として、雇用と従来の賃金・労働条件を守る運動に取り組みます。

《地域の交通安全センターとして》

高齢運転者の事故が社会問題となる中で、高齢者講習・認知機能検査・運転技能検査への対応が自動車教習所の業務としてのウェイトを増しています。2024年の「認知機能検査」受検者数は2,653,291人で、前年比で約9万人増、10年前と比べ約100万人増加しました。「高齢者講習」の受講者数は3,873,772人で10年前と比べ約130万人増えています。さらに2022年からスタートした「運転技能検査」(75歳以上で特定違反歴のある人の免許更新時の検査)も23年は163,835人、24年は156,375人が受検しました。なお、24年の運転技能検査の合格率は71.4%でした。

これら高齢者の免許更新に関わる実務の大半は、自動車教習所が担っており、超高齢化社会での交通安全に果たす役割は大きくなっています。また将来的に自動車教習所が存続するためにも、認知機能検査や高齢者講習による収入は重要です。

<自動車教習所の社会的役割>

①運転免許を取得するための教育施設

②各種法定講習の機関

③地域の交通安全教育センター

<指定教習所数・卒業者数の推移>
指定教習所数 卒業者数
2015年 1,339 1,571,071
2024年 1,288 1,508,109

《制度改正・外国人対応・自動運転などの課題》

2025年4月1日付で施行される道路交通法施行規則の改正により、MTのカリキュラムなど様々な変更が行われました。また25年9月1日からは二種免許のカリキュラムが大幅に短縮され、学科が19時限から17時限に、技能が21時限から12時限になります。

また、職業運転者の特定技能1号指定などの影響から外国人教習生の増加が見込まれ、多言語に対応する体制が今以上に必要になります。外国人対応の課題については、全日本指定自動車教習所協会連合会(全指連)も2025年度事業計画で、「自動車運送業の人手不足などから、特定技能制度に基づき外国人が従事できる事業分野に『自動車運送業』(トラック、バス、タクシー)が追加されたことに伴い、当該在留資格で令和6年4月からの5年間に最大で24,500人の外国人の入国が認められることとなった。これを受け、同外国人に係る、いわゆる『外免切替』をはじめとした国内免許取得のための手続の円滑化及び本邦の道路交通への安全かつスムーズな適応に向けた協力を行うべく、警察庁及び関係団体等と連携した取組に努める」と明記しており、労使共通の課題として公的支援の獲得も含めて運動していく必要があります。

また、場内での技能教習における指導員の役割を人工知能(AI)に担わせる「AI教習」が少しずつ拡大してきていますが、指導員の雇用を脅かすだけでなく、十分な安全教育が行われないまま路上に出る危険もあり、警戒が必要です。

いよいよ、特定条件下でドライバーを必要としない「自動運転レベル4」が国内外で実用化されてきました。将来的に完全自動運転の車両多数が公道を走行するようになった際に運転免許制度と教習所産業、そして労働者の雇用と賃金がどうなるのか、対策を検討すべき段階に入っています。

2.自教労組の運動課題

(1)雇用・労働条件改善の取り組み

教習生と直接接する指導員が意欲を持って働ける労働環境を作ることが、教習の質を確保し公益性の高い教習業務を適正に行う上で何より重要であることを確認し、エッセンシャルワーカーとして、自教労働者にふさわしい賃金・労働条件の確立を目指します。他産業に負けない賃金を獲得するため、価格転嫁や公的支援の獲得には労使一体で取り組みます。

①労働条件の不利益変更や不当労働行為を許さず、真摯な団体交渉を通じて、賃金・労働条件の改善に取り組みます。

②次世代を担う若い指導員を定着・育成する観点から適正な定期昇給や一時金・退職金の確保に奮闘します。また時間外労働について「月45時間、かつ年360時間」の遵守を求め、特に繁忙期に長時間労働が常態化している状況の是正を求めます。さらに、教習間インターバルの10分間を労働時間として扱うことなど、適正な労働時間の算定による賃金支払いを確実に行わせます。

③短時間及び有期雇用者(短時間・嘱託乗務員)に対する不合理な格差の是正を求める団体交渉を推進するとともに、本人の求めによる正規雇用労働者との待遇差の内容・理由・決定に関する使用者の説明義務についての協定化と就業規則の変更を進めます。

④事業の休止・廃止、譲渡など、雇用・労働条件にかかわる経営変更については、労働組合と事前に協議し、同意を得てから実行するよう「事前協議・同意約款」を協定化します。

●定年延長の取り組みと嘱託指導員の労働条件改善

年金の支給年齢が段階的に65歳に引き上げられていることから、これに対応した定年延長と労働条件の改善は必要となっています。この課題と向き合い、以下の点について力を入れます。

  • 65歳までの定年延長と70歳までの安定雇用の実現
  • 契約社員(定年後再雇用者を含む)が、正社員と同一シフトで働く場合には「同一労働・同一賃金」の実現
  • 高齢指導員の健康状態に配慮した勤務シフト作り
  • 健康診断及び日常的な健康管理の充実

特に「65歳までの定年延長と70歳までの安定雇用」については、全指連の2025年度事業計画においても「高齢・障害・求職者雇用支援機構の委託事業として設置された指定自動車教習所業高齢者雇用推進委員会において、会員教習所の職員が70歳まで働けるような方策を示すため、高齢者雇用推進ガイドラインを策定し、その周知・普及を図る」と明記されているように使用者側にも共通の問題意識があることを踏まえ、早期実現を目指して取り組みます。

(2)自動車教習所の政策課題

全自交労連自動車教習所部会は、「自治労全国一般評議会自動車教習所協議会」と連携し、また「連合自動車教習所連絡会」の一員として自動車教習所を巡る様々な政策課題の改善に取り組み、警察庁等への要望を行っていきます。特に、本年においては価格転嫁を早急に実現するため、教習料金の下限価格の目安の設定など、ダンピング阻止に向けた対策を強く行政に求めます。

さらに、ハイヤー・タクシーで働く仲間を増やすためには、自動車教習所への公的支援拡充が不可欠であるとの考えに基づき、ハイタクフォーラム(全自交、交通労連ハイタク部会、私鉄総連ハイタク協議会)として国土交通省に行う要請においても、自動車教習所と自教労働者への支援を求めていきます。

具体的には

  • 教習所に対する国や自治体の公費助成の獲得
  • 教習料金のダンピング阻止と全国一律の最低価格の設定
  • 「交通安全教育センター」としての位置づけの強化と、認知機能検査等の業務に対する適正な対価の設定
  • オンライン学科教習に当たっての合理的なシステム構築
  • AI技能教習の導入・拡大阻止
  • 完全自動運転の実用化後を見据えた対策の検討
  • 指導員・検定員が受講する必要がある講習について、育休や産休などで離職中の者に対する周知方法の改善と受講機会の増加
  • 指導員・検定員の様々な資格を、各地域で取得できるようにするなどの改善
  • 認知症の予防や早期発見のために自動車教習所の活用検討
  • 二輪免許の区分において、排気量250ccクラスの車両の増加を踏まえた適正な見直し
  • 教習と教習のインターバル(10分間)については実態として引き継ぎや原簿の押印、本人確認、消毒作業などに充てられていることが多いため、休憩時間ではなく労働時間として算定すること

などの政策要求実現に取り組みます。

(3)自教部会の活動強化と組織拡大

多くの自教職場に労働組合が存在せず、未組織のままとなっており、不安定雇用の中、長時間労働と低賃金を押し付けられてきました。未組織職場での組合結成を促し、全自交の仲間として賃金改善に取り組むことが必要です。

 また、職場の組織率向上は交渉力に大きく影響することから、職場における加入オルグを強化します。同時にユニオン・ショップ制度の導入についても強く要求します。

さらに、自治労全国一般自教労協と連携した全国自教交流集会や、連合・自動車教習所連絡会の交流集会への参加を通じ、産別組織を超えた交流・連帯・共同行動によって課題の解決に取り組みます。

Ⅷ.政治課題への取り組みと労働者の連帯

全自交労連は、立憲主義に基づく民主政治を守り、労働者・生活者目線の政治と人権と平和を大切にする政治を実現するために、立憲民主党を中心とした政権交代を強く目指していきます。働く者の声を代弁してくれる議員を国会や地方議会に送り出し、労働者の声を力強く国や自治体の政策に反映させるための活動に取り組みます。腐敗した自民党政治に対する国民の激しい怒りを投票で示し、労働者・生活者目線の政治、排外主義と差別に抗い平和と人権を守る政治をただちに実現させなければなりません。同時に立憲民主党に対しても若年層への支持拡大策など政権交代に向けた取り組みの強化を求めていきます。

ハイヤー・タクシー労働者の抱える課題を解決し、賃金・労働条件の向上を実現するため全自交労連・交通労連ハイタク部会・私鉄総連ハイタク協議会で構成する「ハイタクフォーラム」を通じて、「タクシー政策議員連盟」の活動を支援します。

全日本交通運輸産業労働組合(交運労協)の一員として、交通運輸サービス産業で働く労働者の権利と社会的地位の向上に取り組みます。

日本労働組合総連合会(連合)に加盟し、全ての労働者との連帯・共闘を推進します。国際運輸労連(ITF)を通じて世界の交通運輸労働者と連帯します。

「交通の安全と労働を考える市民会議」や「日本労働弁護団」等の諸団体の活動に協力し、ライドシェア阻止等、市民の安全と労働者の権利を守る運動を行います。

Ⅸ.平和と憲法、人権、環境を守る取り組み

今年は戦後80年、被爆80年の節目であり、改めて先の大戦で受けた被害や周辺諸外国に与えた加害の歴史を振り返る重要な機会となり、『二度と繰り返してはならない』という思いを新たにする年となりました。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞も、平和を願う世界の人々の思いの表れにほかなりません。「仕事も生活も平和であってこそ成り立つ」「戦争で死ぬのは兵士だけではない」という事実を改めて自覚し、我々労働者も力強く反戦・反核の運動に取り組み続けていかねばなりません。

国会では、改憲を求める声が高まり、さらには「国民主権」すら明記していない危険な「創憲案」を掲げる参政党が支持を伸ばすなど、危うい情勢が続いています。戦後の繁栄と平和を支えてきた日本国憲法とその崇高な理念を守らなくてはなりません。

また地球温暖化は止まらず、列島は尋常ではない暑さに苦しみ、熊本県での豪雨災害をはじめとした異常気象による災害に悩まされる一年ともなりました。災害への備えを進めるとともに、地球温暖化を食い止めるための取り組みも重要です。

全自交労連はフォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)の構成団体として

  • 憲法を護り、憲法理念を実現する取り組み
  • 軍備拡張に反対し外交努力による平和を追求する取り組み
  • 核兵器廃絶に向けた取り組み
  • ヒバクシャ(被爆者・被曝者)援護と連帯
  • 沖縄の新基地建設を阻止する取り組み
  • 原発再稼働に反対し、脱原発を実現する取り組み
  • 人種差別根絶、部落差別根絶、などあらゆる人権問題への取り組み
  • 労働基本権を守り、労働組合に対する不当な弾圧を許さない取り組み
  • 食・水・みどりをめぐる取り組み

に参加します。

Ⅹ.労働者自主福祉運動について

1.こくみん共済 coop <全労済>の取り組み

(1) 生活保障設計運動の充実・強化

組合員の生活を守り、豊かにすることを目的にこくみん共済 coop と連携し、引き続き「生活保障設計運動」を展開し、組合員に必要な保障を提供していきます。

(2) 労働者共済運動に関する研修会の実施

労働者自主福祉運動の発展と組合員の福祉向上をはかるため、傘下単組・支部において、組合員・組合役員を対象とした労働者共済運動に関する研修会を実施します。

(3) こくみん共済 coop の共済制度推進

組合員の相互扶助の精神にもとづき、「人と人との協同」を原点に労済運動を労働者自主福祉運動の柱の1つとして取り組みを進めます。また、組合員とその家族の「いのちと暮らしを守る」活動として次の共済を積極的に取り組みます。

① 新ハンドル共済:全自交労連のスケールメリットをいかした産別統一制度の利用拡大を目指した運動を展開します。

② 全自交新ねんきん共済:市場金利の上昇や多様化する組合員ニーズを踏まえ、全自交新ねんきん共済(新団体年金共済)の取り組みを進め、若年層の資産形成や老後への経済的な備えを支援していきます。

(4) マイカー共済・自然災害共済の取り組み

① 2021年11月よりマイカー共済が制度改定となり、全自交労連としての加入台数ならびに損害率に基づいた団体割引が適用されており、2025年11月より団体割引率は17.5%となります。引き続き、全自交労連全体で、社会課題と連動した取り組みであるマイカー共済の見積り1件に対して横断旗を1本寄贈する「7才の交通安全プロジェクト」を契機とした積極的な見積り活動を展開し、割引率の拡大を目指した取り組みを実施します。

② 多発している大規模な自然災害や、今後も想定される超大規模自然災害の発生に備え防災意識の向上をはかるとともに、「災害時無保障者をなくす」取り組みを引き続き強化します。

(5) こくみん共済 coop 中央推進会議との連携

こくみん共済 coop 中央推進会議での取り組みを傘下単組へ共有化するとともに、傘下単組・支部における加入率・付帯率の向上・拡大に向けた取り組みを強化します。また、構成組織間の情報の共有化に努めます。

(6) 共済の推進における事務手続きについて

こくみん共済 coop の共済契約等に関わる事務手続きは、組合員からの委任に基づいて全自交労連加盟単組がそれぞれ代行します。この事務手続きに際して生じる費用相当額は、共済契約者に代わってこくみん共済 coop から団体事務手数料として支払われます。

また、共済契約に関する事務手続きを円滑に進めるため、こくみん共済 coopより必要最小限の範囲において個人情報の提供を受けます。

2.労働金庫(ろうきん)運動の取り組み

(1) 生活応援運動の推進

組合員のライフサイクルに合わせて生活を応援するため、ろうきんと連携して生活改善・生活防衛・生活設計の三本柱による「生活応援運動」を推進し、ろうきんへの預金結集と融資利用などに取り組み、労金の利用を通じた組合員の福利厚生の充実を図っていきます。

(2) ろうきんの商品・サービスに関する周知

生活応援運動の一環として、組合員に対してろうきんの商品やサービスに関する周知に取り組みます。特に、ろうきんのキャッシュカードは多くのコンビニATMで利用手数料が不要であることなど、手数料負担の軽減を通じた組合員の可処分所得の向上に資することから周知を進めます。

(3) ろうきん運動に関する研修会の実施

労働者自主福祉運動の発展と組合員の福祉向上を図るため、傘下単組・支部においてろうきんと連携し、組合員・組合役員を対象として、以下の研修会の開催を推進します。

① 労働者自主福祉運動の次世代への継承に向けて、勤労者の助け合いによる金融機関であるろうきんの歴史や理念についての研修会

② 成年年齢が18歳に引き下げられたことも踏まえ、多重債務者やマネートラブルに陥らないための金融教育

③ 収入・ライフステージに合わせた健全で計画的な支出(ローンなど)・資産形成(貯蓄・投資・年金)を提案・啓発・推進するためのライフプランセミナー

(4) 労働金庫運動中央推進会議との連携

連合および各産別を中心に構成する「労働金庫運動中央推進会議」への参画を通じて産別間での情報共有を図り、本推進会議で掲げる以下の重点課題に基づいた取り組みを本部として進めるとともに、傘下単組・支部に取組内容を共有し、傘下単組・支部におけるろうきん運動の推進に向けた取り組みを強化します。

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