全国自動車交通労働組合連合会はハイタク産業に従事する労働者で構成する労働組合の連合体です。本ホームページは、どなたでも自由に全てご覧いただけます。


ホーム > ニュース > 2024年4月25日掲載



固定給増額や退職金の新設も

2024春闘の4月前半段階の妥結報告では、多くの仲間が大幅な前進を勝ち取りました。会社から労働分配率改悪の逆提案を受けるなど、今まさに厳しい交渉を闘う仲間を勇気づける内容です。
運賃改定の増収効果を確実に賃金アップにつなげるため、殆どの妥結単組が労働分配率の維持を確認し、さらに一時金を獲得しました。
固定給・基本給の引き上げを実現した職場も多く、A型賃金の柏崎交通労組では、乗務員のベア4000円に加え、非乗務職は初任給を1万5000円アップ。また名鉄西部交通労組や石川交通労組、しあわせ交通労組などが基本給の引き上げを実現。固定額の交通費を3500円増額した山梨交通YKタクシー労組のように手当で実質のベアを勝ち取った職場もあります。
また退職金制度を創設した新発田観光タクシー労組のように、永く勤続することにメリットを増やす妥結も目立ちました。
さらに労働時間短縮による賃金減少が懸念されるハイヤー乗務員に対しては、日交労働組合が最大で月8万円になる新規の手当を獲得し、昇給と賞与増額も実現するなど、極めて大きな労働条件改善を勝ち取っています。



2024春闘妥結状況 4月11日現在 12地連本 33組合・支部 7566人以上が妥結

【北海道地連】
ダイコク交通労働組合 4月2日 現行賃金制度維持▽制服支給実施▽6回もの団交を重ねた

【岩手地本】
一関支部 3月19日 現行賃金制度維持
玉川支部 3月20日 現行賃金制度維持
北都支部 3月21日 現行賃金制度維持▽決算賞与制度新設▽定年を65歳から70歳に延長▽通勤手当新設▽無事故表彰金を3000円から5000円に増額▽ワイシャツ支給
釜石支部 3月26日 現行賃金制度維持

【山形地本】
今村支部 3月13日 現行賃金制度維持 夏季一時金として半期営収の0・83%を支給

【千葉地連】
京成タクシー佐倉労働組合 3月7日 現行賃金制度維持▽解決一時金=正社員15,000円(うち物価高騰手当5,000円)、嘱託社員8,000円(うち物価高騰手当3,000円)、定時制乗務員3,000円※物価高騰手当を獲得し、前年より増額

【東京地連】
三交労八王子交通支部 2月28日 定昇500円▽一時金現行協定維持
日交労働組合 3月28日 タクシー=現行賃金制度維持▽ハイヤー=平均1,800円の定期昇給を実施▽タクシー賞与=昨年同基準だが、最高65,000円の上乗せ部分を確保し、支給の総原資は大幅増▽ハイヤー賞与=昨年実績+2万円の年間600,000円▽ハイヤー乗務員に月間1~8万円の新設手当を導入▽タクシーの帰路高速会社負担に1カ所を追加▽職員に宿直手当を新設▽全体に6月より新たな福利厚生制度を実施
京王自動車労働組合 3月28日 現行賃金制度維持▽タクシー乗務員の春季賞与について会社側の不支給提案をはねのけ、今季は現行協定どおり支給▽期末一時金=ハイヤー(正社員・嘱託)10,000円▽バス(正社員・嘱託)10,000円▽バス(パート)5000円▽事務・整備職(正社員・嘱託)10,000円▽事務・整備職(パート)5,000円
荏原交通ユニオン久が原 3月31日 現行賃金制度維持▽最高で25,000円の特別手当を支給
大和自動車交通労働組合 4月1日 タクシー=現行賃金制度維持▽ハイヤー=定昇300円▽職員工員=定昇300円(+勤続勤務給)▽タクシー賞与は昨年同基準▽ハイヤー賞与は昨年実績+20,000円の年間420,000円▽職員賞与は昨年実績+13,000円の年間450,000円▽工員賞与は昨年実績+15,000円の年間415,000円▽GW期間のタクシー足切り基準改善
三交労八南交通支部 4月4日 定昇800円▽一時金現行協定維持▽退職金積立期間を63→65歳までに延長▽診断書発行手数料補助

【山梨地連】
山梨交通YKタクシー労働組合 3月28日 現行賃金制度維持▽交通費を月額4,500円から8,000円に増額▽退職金の積み立て金額を正社員で月額3,500円から4,000円に、定時制で1,500円から2,000円に増額

【静岡ハイタク連合会】
静鉄タクシー労働組合 3月19日 乗務員=現行賃金制度維持▽非乗務員=ベア1,000円
伊豆箱根交通労働組合 3月22日 乗務員=現行制度維持▽一般職=定昇実施▽特別一時金4,000円<昨年より1,000円増>(短時間労働者は1,000円)▽営業による補填金額を現行の1時間2400円から2700円に増額▽班長手当の見直しで合意(金額は継続協議)
遠鉄タクシー労働組合 3月24日 乗務員=現行賃金制度維持▽非乗務員=基本給改定▽一時金で乗務員の欠勤控除改善▽非乗務員の一時金は年間3.5カ月(昨年+0.3カ月)▽全職共通で期末賞与0.1カ月▽年末年始手当1日ごと1,000円支給▽人間ドック補助額を現行より5,000円増額▽車いすの乗降手当を1回300円から500円に増額▽福祉タクシー手当を1回700円から1,510円に増額▽降車勤補償の各項目を改善

【愛知地連】
名鉄西部交通労組 3月6日 基本給1,250円昇給(時間外等の割増を含む)▽無事故手当12,000円とサービス手当6,000円の継続▽賞与は、昨年実績+90,000円の年間平均500,000円▽春闘一時金としてフルタイム20,000円、短時間10,000円▽福利厚生行事の開催を見送る代替措置としてクオカード3,000円分を支給▽冬季一時金(年末年始奨励金)として1勤務当たり3,000円
名鉄四日市タクシー労働組合 3月26日 月例の無事故手当を500円増額▽賃金制度全般の改正について継続協議
尾張交通労働組合 3月29日 現行賃金制度維持▽春闘解決金=組合員30,000円、準組合員10,000円▽年功表彰制度の拡充▽駐車場内整備

【新潟地連】
しあわせ交通労働組合 3月19日 基本給の時間単価を引き上げ、地域最低賃金を49円上回る980円に
第一タクシー労働組合 3月21日 現行賃金制度維持▽夏季一時金は別途交渉
柏崎交通労働組合 3月29日 タクシー乗務員=月例賃金で定昇500円+ベースアップ4000円の昇給▽整備、事務、配車各員の初任給を一律で15,000円引き上げ▽夏季一時金=前年より50,000円増の200,000円▽冬季一時金=前年より100,000円増の300,000円に引き上げ▽現行の「企業型確定拠出年金」の増額について継続協議
新発田観光タクシー労働組合 4月3日 現行賃金制度維持▽退職金制度を新たに創設し、56歳以下を対象に月額5,000円を退職金に引き当て

【石川ハイタク連合会】
石川近鉄タクシー労働組合 3月13日 現行賃金制度維持▽春闘解決一時金5,000円に加え、コロナ期間中慰労金10,000円を獲得▽乗務員研修の実施▽夏用制服(シャツ・ズボン)の支給▽駐車場の整備▽コンフォートにバックモニター設置
石川交通労働組合 3月25日 基本給昇給、97,000円から104,000円に▽期末一時金20,000円▽ライドシェア問題に対し、労使一体で取り組むことを確認

【兵庫地連】
ポートグループ労働組合 3月18日 タクシー=現行賃金制度維持▽バス=乗務手当を増額(乗務日数×100円)▽コロナ禍に中断していた福利厚生行事を順次開催していくことで合意

【関西地連】
全自交関西ユニオン(加古川タクシー) 4月2日 現行賃金制度維持


多くの懸念

一種免許のドライバーが運転する自家用車を、タクシー会社が管理し、アプリで配車する「自家用車活用事業」(日本型ライドシェア)が、4月8日より東京特別区・武三地区で運行開始しました。
国交省は3月29日に関係通達を発しましたが、ドライバーの働き方を雇用に限定する記述がない点や、車体表示に明確なルールがないなど、多くの懸念が残る内容です。
なにより対象エリアについて、配車アプリのデータがない地域は全国一律で、「金曜と土曜の午後16時台〜午前5時台」を『タクシー不足』とみなし、タクシー台数の5%まで運行を可能とする極めて乱暴な方針が示されたことは厳しく批判されなければなりません。
全自交は「ライドシェア新法」の阻止に全力をあげつつ、自家用車活用事業が無秩序に運用されることのないよう、警戒を強化します。


女性平均と東京で全産業を抜く

2023春闘の成果で、タクシーの労働分配率の改悪を許さず運賃改定の効果を適切に賃金に反映させた結果、タクシー乗務員の2023年の賃金が大幅に上昇しています。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、2023年6月のタクシー乗務員(男女)の賃金は平均33万8500円を記録。
2022年に支給された一時金や賞与額を合わせた推計年収で前年より57万円アップし、バブル期のピークやバス乗務員の年収までせまっています。
またコロナ禍の2009年には約209万円まで拡大した全産業平均(男女計)との年収の格差も約88万円に縮小しました。さらに女性タクシー乗務員と全産業の女性の平均年収を比べれば、タクシーが上回る結果となりました。
東京では月額の賃金が48万円という高額を記録。推計年収でも都内の全産業平均を上回るという歴史的な賃金上昇を見せています。
今春闘でも賃金・労働条件を守り、さらに改善し私たちの賃金を全産業に負けない水準に引き上げましょう。



全国のハイタク労働者の声を行政に



ハイタクフォーラムが3月7日に行った国土交通省と厚生労働省への要請交渉(一部は前号で既報)では、全国の全自交の仲間が声を上げました。
まず厚生労働省交渉では、東京地連帝都自動車交通労組の吉田昌央書記長が、自家用車活用事業のドライバーの労働時間管理について問いただし、十分に検討されないまま制度が始まる問題を明らかにしました。さらに、新潟地連の海藤正彦書記長は、最低賃金違反などの状況を申告しても指導がなされない事実を告発し、強く対策を求めました。
国土交通省交渉では、東京地連の内田亨委員長が、運賃改定後の賃下げについて事業者の言い分が正しいのか国交省に問いかけ、国交省から「我々が『ここまで(下げて)いい』とは言っていない」との答弁を引き出しました。また、関西地連の櫻井邦広委員長は、奈良のタクシー協会が、改善基準告示の規制をまぬがれるために勤務時間の中に長時間の休憩を挟む「中抜け」、の解禁を求めていることについて、「悪用され、労働時間規制がなし崩しになる」と厳しく批判。
同地連の成田次雄書記長は自家用車活用事業について、正規のタクシー乗務員の売上減少や白タク営業の温床になりかねないと批判。富山地連の石橋剛委員長は、自家用有償運送の制度改正議論の中で、福祉有償運送の扱いを問いましたが、明確な回答がありませんでした。


労働法権威が意見

自家用車活用事業(日本型ライドシェア)のドライバーの働き方について、国土交通省は、雇用契約に限定するのか、個人事業主扱いの業務委託(請負契約)を認めるのか明確な方針を示さないまま制度がスタートしてしまいました。
求められる管理の実態などから、本来は雇用契約に限定されるはずですが、ライドシェア推進派・規制緩和論者は、人件費を下げるために、強硬に「請負を認めろ」と主張しています。
この問題に関し、労働法の権威である早稲田大学の島田陽一名誉教授が「ライドシェア事業の運転者について、業務委託とすることのメリットは現状では見出しがたい」と一刀両断しました。
島田教授は、4月8日に開催された国土交通省の交通政策審議会第4回自動車部会に招かれ、意見を表明。
ライドシェアドライバーの労働者性を裁判で争った場合、アプリを使った管理をどう評価するかで判決が異なる可能性を指摘した一方で、最初から雇用契約としておけば全く問題は生じず、世界の主流も労働者性を認める方向であると述べ、最初から「政策的に労働者とすることが妥当」と国交省に提言しました。





京都でライドシェア抗議行動

京都市域の個人タクシー6団体で組織される個人タクシー団体協議会(宮里憲丈会長代行)が3月29日に、京都市役所前で、京都ハイタク共闘会議加入の労働団体や障害者団体と一緒に、ライドシェア新法反対の街頭集会を開催しました。集会には総勢約100人が参加し、全自交京都地連からは櫻井邦広委員長、長澤義和副委員長と関西地連の成田次雄書記長が参加しました。
集会では、呼びかけ団体の宮里会長代行が「京都でも本当にタクシーが不足しているのか。ライドシェア導入が先にありきの作為的報道だ。ライドシェアではお客様の安全・安心が担保・保障ができるのか」と訴えました。法人のタクシー運転手の代表として、労働団体から2人が、個人タクシー協同組合から2人が発言した。そのうち、全自交から成田氏がマイクを持って、市民や通行人にライドシェアの危険性を訴えました。
利用者の立場から、京都障害者の生活と権利を守る連絡会・松本美津男代表が「安全・安心が担保できないライドシェアは障害者にとっても危険で利用できない」と導入絶対反対を表明しました。昨年夏の菅前首相のライドシェア発言以降、個人タクシー団体、労働団体、障害者団体による街頭集会は、全国的に見ても初の試みです。ライドシェア新法阻止のため垣根を超えた運動を広げましょう。
垣根を超え、労働団体と個人タクシー団、
障害者団体がともに京都市役所前で
ライドシェア抗議行動を実施


旅客二課長が講演

全自交東北地連は3月24日、秋田市内で春闘セミナーを開催し、高橋学委員長が「ライドシェアは究極の規制緩和だ」と述べ、新法阻止の重要性を強く訴えました。
東北運輸局から関澤真旅客二課長が来賓参加して講演=写真。「自家用車活用事業」の制度を説明するとともに、タクシー業界への期待を込めてエールを送りました。
全自交本部の津田光太郎書記次長が春闘とライドシェアをテーマに講演。会場からは「新法阻止のために、悔いを残さずさらなる運動を」(江良實・東北地連書記長)、「全てのライドシェアに反対すべきだ。一度妥協し風下に立てば、二度と風上には立てない」(今野徹・岩手地本書記長)などの意見が上がりました。宮城地本の大沼富士雄書記長は、維新の会の反対を押しのけ、宮城県議会でライドシェアに慎重な扱いを求める意見書の採択を実現した経緯について報告しました。

私鉄総連組織内・森屋隆参議院議員の推薦を
確認し、全自交東北の高橋学委員長(右)が、
私鉄総連東北の小池泰博委員長( 左)に
推薦状を手渡しました




全自交石川ハイタク連合会は、4月11日に石川県全域をまわる組織拡大行動を実施しました。金沢市の石川交通本社を午前8時40分に出発。能登地区の和倉温泉駅からスタートし、七尾駅・羽咋駅と移動。金沢地区は金沢駅東口・西口の両タクシー乗り場、南加賀地区は小松空港・加賀温泉駅・粟津駅・小松駅を順次まわり、全自交労連のチラシを配布しながら、職場での賃金・労働条件などに対する理不尽な話や悩み事等を聞き労働組合の必要性を訴え、労働組合作り方や全自交への加盟を勧めながら現場の声を聞きました。
能登地区の石川交通七尾営業所では、震災の影響から需要が極端に減った和倉温泉の待機車両を七尾駅に集中させ、対応していました。一方、金沢駅の西口は待機している車両が少なく、東口でも常にお客様がタクシー乗り場で待っている状況でした。
加賀地区では、新幹線の延伸に合わせ、加賀市版や小松市版のライドシェアが導入されているため、乗務員からはライドシェアの現状について質問・意見がありました。チラシの受け取りを拒否する乗務員の方は見受けられず、車内でチラシを読んでいる方ばかりだったとのことです。
市野晃司委員長は「全自交石川ハイタク連合会は、行政に対し問題が一つでも解消できるよう投げかけ、また地域公共交通としての役割をしっかりと果たしていけるよう組織拡大行動を続けていく」との決意を報告しています。
能登半島地震で被災し厳しい状況が続く
和倉温泉駅。市野委員長が現場の乗務員さんの
声を聞きました


首長独断に一定の制限

最近、自家用有償旅客運送制度(道路運送法78条2号)のことを「自治体ライドシェア」と呼ぶ風潮があり、国土交通省は通達を改正して、地域公共交通会議の合意がなくとも、自治体の首長の判断で実施できるようにすることを検討していました。しかし全自交本部や地連本が「首長の独断を招く」と反対のパブリックコメントを送付した影響もあり、「首長の判断で実施する場合も、まずは地域公共交通会議で規約(設置要綱)を変えなくてはならない」という方向へ、一定の歯止めがかかる見込みです。
石川県加賀市では新幹線の延伸に合わせ、市内全域で最大50台の自家用有償車両をUberアプリで配車する制度を始めました。しかし、自家用有償旅客運送はあくまでもタクシーやバスでカバーできない場合に、非営利で行う制度です。このような本来の主旨にそむく運用を阻止していかなくてはなりません。
加賀温泉駅の「自治体ライドシェア」乗り場







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