全国自動車交通労働組合連合会はハイタク産業に従事する労働者で構成する労働組合の連合体です。本ホームページは、どなたでも自由に全てご覧いただけます。


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個団結力でコロナ危機を乗り越えよう

メインスローガン(案) ライドシェア反対!タクシーを地域交通の主力に

2021年度運動方針(案)要旨 職場討議資料


Ⅰ.はじめに

新型コロナウイルス感染症の感染者数(累計)は、全世界で2億2465万人超、死者は463万人超(9月14日・米ジョンズ・ホプキンス大)に達しました。日本国内でも感染者数(累計)164万人超、死者は1万6855人(9月14日・NHKまとめ)を数えますが、菅政権は有効な感染防止対策をとれず、迷走を繰り返し、ワクチン接種回数でも他の先進国に後れを取る中、利権にまみれた東京五輪を強行し、過去最高の感染拡大に道を開いてきました。
日本社会は、コロナ以前から安倍政権の下で不安定雇用を増大させ、格差を拡大させて来ました。大企業と富裕層を優遇して「分厚い中間層」を破壊し、貧困世帯を増加させる中、新型コロナが日本社会を襲い、国民の命と暮らしを脅かして、医療崩壊、雇用崩壊、交通崩壊の危機をつくりだしているのが現状です。タクシーの売り上げも2020年4︱5月は対前年同月比37%台にまで低下し、その後も50%~60%台に低迷しています(全タク連緊急サンプル調査・全国平均)。
悲願の組織統合を果たし、団結を固める仲間

しかし、タクシーは重要な公共交通として、コロナ禍でも患者や医療関係者の移動、重症化リスクが高い高齢者の生活交通を支え、バス路線撤退後のデマンド交通やスクールバス再編後の児童送迎を担い、現場のハイタク労働者はエッセンシャルワーカーとしての存在感を高めてきました。コロナ禍の最前線で働くハイタク労働者の命と雇用と生活を守るため、労働組合の団結をさらに拡大・強化することが求められています。

【世界情勢】
現在、ワクチンへのアクセスが世界経済を二分する断層線となっており、コロナ禍での累積損失は、発展途上国が先進国の2倍の損失を被り、極度の貧困に陥った人は2020年に9500万人も増え、新たに8000万人が栄養不足になったといわれています。格差は各国の国内でも広がり、家計や企業への財政支援、職を失った労働者の再訓練・教育と所得支援、児童等への学習支援の強化が求められます。
ワクチン普及の世界的な格差や生活水準の格差を縮めるため、また気候変動への対応、デジタル化、国際法人課税の刷新、国境を越えた脱税の抑制のためにも強力な国際協調が必須です。

【国内情勢】
国内では、第5波の感染拡大で、病床不足が生じて医療が逼迫する事態となっています。医療支援の充実、中小企業支援、雇用対策、最低賃金引上げを大胆に実行し、エッセンシャルワーカーへの支援を実行することこそ、コロナ危機を乗り越え、日本の安定を取り戻す道です。
混迷を深める菅政権の新型コロナ対策に対し、国民の批判が広がっています。衆議院総選挙では、長期政権で金権腐敗を極め、新型コロナ対策でも「命より利権」を優先させてきた自民党政権にNOを突きつけ、命と暮らし最優先の政治に転換させることが求められています。


Ⅱ.ハイタク産業の動向

Ⅱ.ハイタク産業の動向

感染拡大の影響で、タクシー産業は全国的に事業継続が困難な状況に陥りました。国交省から事業継続要請を受け、緊急事態宣言下でも公共交通として営業継続した結果、経営が一気に悪化し、多額の融資でしのいでいるのが実態です。運行継続のための補償は不可欠ですが、国の対応は全く不十分であり、強く批判しなければなりません。
多くのタクシー事業者が倒産・廃業に追い込まれ「交通崩壊」の危機が深刻化しています。事業の統廃合や再編も加速しており、高知県の須崎市では全タクシー会社3社が同時廃業し、商工会議所が新会社を設立して事業を引き継ぐ事態も起きています。
雇用調整助成金を活用した部分休業を大半のタクシー会社が実施し、雇用を辛うじて維持しているのが現状です。また、夜間の需要が激減し、多くの会社で勤務シフトの大幅な変更等に追われました。
乗務員の離職も進み、2020年度は東京特別区・武三地区の法人タクシー運転者が4469人減少、過去10年で最大です。中部運輸局管内でも1年半で3000人が減少しました。感染リスクから高齢乗務員の退職者が各地で増加しています。
訪日外国人客は激減し、今後の観光事業の在り方を真剣に検討する必要があります。また、路線バス事業も大きなダメージを受けており、地域交通の主力としてタクシーがデマンド交通や通学を支えることが求められます。

2. 地方自治体による支援とワクチン接種での活用

全自交労連は連合・事業者団体・地方議員と連携して、地方自治体に対する支援要請行動を強めました。多くの自治体で「タクシーは市民生活に欠かせない公共交通」との認識が広まり、支援策も全国に拡大しています。
内容は多岐にわたりますが、北海道の旭川市で路線バスとタクシー運転者に「1人2万円」の慰労金が支給されたように、乗務員への直接支援を全国に拡大する必要があります。国交省が把握した2021年5月20日時点の自治体によるタクシー支援事業は、全国で2551を数え、6月補正予算で、タクシー乗務員へのワクチン優先接種や「タクシー1台に10万円」を実行した自治体もあります。
またワクチンの輸送や接種者の送迎にタクシーを活用するよう各地で要請行動に取り組みました。国交省のまとめでは、4月30日現在、307自治体でワクチン接種にバス・タクシーが活用されており、タクシー券の配布(135地域)、乗合タクシーで送迎(76地域)などとなっています。ジャンボタクシーを市が借り上げ接種会場までの往復運送をした例や、医療従事者への送迎・タクシー券配布を行う自治体もありました。

3.改正タクシー特措法

改正タクシー特措法による特定地域は9月1日現在で、わずか3地域まで減っています。しかし、日車営収はコロナ禍で大幅に下落しており、適正化・活性化を全国的に進めるためには指定基準を見直す必要があります。また「全国的」「恒常的」な対策のため、ハイタクフォーラムが要請している「タクシー事業法(仮称)」で、①タクシー事業の免許制と5年ごとの更新制②需給動向判断の復活③事業の休・廃止の許可制などの強力な措置を実現しなければなりません。高齢者をはじめとする市民に24時間の輸送を提供できる重要な公共交通機関として、安全と信頼の構築に全力をあげます。

4. 規制改革と「ダイナミック・プライシング」

規制改革推進会議は6月1日に答申を出し、タクシー関係では①「ダイナミック・プライシング(変動運賃制)」②GPSを通じて走行距離・額を算出する「ソフトメーター」③IT機器を使用した遠隔点呼の導入を求めました。国土交通省は年内に変動運賃の実証実験を行う方針で、配車アプリを通じた予約に限定し,認可運賃の「上限から2割増、下限から1割減」の範囲内で変動を認めます。
しかし「いつでも・どこでも・誰でも」安心して利用できる運賃体系でなければタクシーの公共性は守られず、個別運賃を容認することにつながる変動運賃制度を認めることはできません。乗務員だけでなく利用者や事業者からも反対の声が上がっています。変動運賃はライドシェアに道を開く懸念もあります。「日本版ライドシェア」をめざす経済同友会が2020年1月に「需要が供給を上回る時間帯に限り、一般ドライバーによる有償運送を認める」ことを提言した事実を忘れてはなりません。また、ウーバー社は、変動運賃の幅について「需要を喚起するために下は40%」と主張しています。ライドシェア解禁を見据えたウーバーの主張を批判し、変動運賃制の導入を阻止しなければなりません。

5.白タク・ライドシェア

竹中平蔵氏は菅政権発足に合わせ「ポストコロナの日本改造計画」を出版し、「スーパーシティではライドシェアもできる」と豪語。高齢者の通院に「ボランティア・タクシーをタクシー事業者自ら廉価に展開」する構想を示してライドシェア解禁を狙っています。2020年5月27日に「改正地域公共交通活性化・再生法」と「スーパーシティ法」が同時に成立し、「タクシー事業者が行うライドシェア(自家用有償運送)」に道を開いていることを警戒しなければなりません。
「ウーバー・イーツ」配達員など、労働法の適用を受けない日本のフリーランスは100万人を突破しており、ライドシェアが解禁されれば、またたく間にタクシー産業が崩壊する危険があります。

6. WILLER(ウイラー)のMOBI(モビ)

WILLER株式会社(本社大阪)は2021年7月から東京都渋谷区で半径2kmのエリアで月額定額制の乗り放題サービス「MOBI」の実証実験を開始しました。地域公共交通会議や地元事業者への説明もなく突如開始されたものであり、交通空白地の課題解決といった目的を全く持たないものです。同社は今後、豊島区をはじめ「全国100ヵ所」で同様のサービスを展開する意向を示していますが、既存の公共交通に大きな影響を与えかねない乗合サービスが、議会や地元事業者との協議すらなく拡大することは許せません。慎重な対応を自治体と公共交通事業者に求めていきます。


16万筆の署名を集めタクシー議連に手渡す
ハイタクフォーラム代表者ら
Ⅲ.新年度の運動の基調

1. コロナ危機から命と雇用と生活を守る

事業者や行政に対し感染防止対策、事業継続・雇用維持、需要の創出を要求し、タクシー乗務員へ「危険手当」「慰労金」等の直接支援を求めます。悪質事業者による大量解雇、休業手当や最低賃金を支払わない行為は絶対に許しません。休業手当の平均賃金の100%支給をすべての職場で実現し、法令違反を一掃する闘いを強化します。

2. 地域の生活交通を担い、ライドシェア導入を阻止

タクシー事業者がコロナ禍でも国から事業継続を求められ、採算度外視で地域の生活交通を担ってきたことに対し、国や自治体は事業存続を可能とする大胆な支援を実行すべきであり、タクシーを地域公共交通の主力として活用していくことが求められます。バス・タクシーが再起できない程のダメージを受けてしまえば、生活に欠かせない地域交通を白ナンバーの有償運送やライドシェアに頼らざるを得ない状況に陥る危険性があります。

3.組織の拡大・強化

団結力で戦後最大の危機を乗り越えなければなりません。国や自治体への要請行動などの成果を職場と地域に広く宣伝し、ハイタク労働者の信頼を勝ち取り、労働相談にしっかり対応して、全自交労連への結集を実現しましょう。


Ⅳ.命と雇用を守り労働条件を 維持・改善する取り組み

1. タクシー労働者の賃金・労働条件の実態

法人タクシー運転者の2020年推定年収は、全国平均で299万6200円で、前年より57万9600円減少し、新型コロナの影響が大きく影を落としました。全産業男性の推定年収も約13万円低下しましたが、ハイタク労働者との年収格差は187万6000円となり前年より約45万円も拡大しています。
ほとんどの営業所が休業を余儀なくされた結果、月間労働時間は前年より11時間減り、182時間となりました。
全自交労連が、昨年末に行ったアンケートでは、「賃金が30%以上低下」と答えた組合員が60%を超えており、労働組合のない職場からは「休業手当も最低賃金も払われていない」、「賃金が数万円になり生活できない」という悲鳴も多く寄せられています。

2. 乗務員の感染防止対策の強化と補償の充実

車内の高性能空気清浄機の早期導入など感染防止対策に加え、乗務により新型コロナに感染した場合は賃金全額補償と労災認定、保健所判断で自宅待機する場合は生活保障と特別有給休暇等、会社判断で自宅待機する場合は休業手当の支給を求めます。休業手当は「平均賃金の100%」を確保するよう全力をあげます。
さらにハイタク労働者に対し、日額1万円(2労働日で2万円)の「危険手当」「慰労金」等の支給を事業者及び国・自治体に要求します。

3.雇用確保と労働条件維持

経営者は「会社の業績が悪いから」という理由で従業員を簡単に解雇できるわけではありません。「整理解雇の4要件」の全てに適合しない解雇は無効です。また、多くの離職者が出る中、労働条件をさらに低下させれば、産業崩壊を招きます。不当解雇を許さず、団体交渉を積み重ねて労働条件を守ることが必要です。

4. 固定給中心の生活安定型賃金の確立

全自交労連が求めてきた生活安定型賃金をめざし、固定給を中心としたA型賃金の再確立を求め運動します。若年者や女性にも魅力ある労働条件の確立に全力をあげます。

5. 「出来高払い制の保障給」の周知と罰則付き義務化要求

すべての職場で「出来高払いの保障給」に関する協定を締結し、就業規則に明記させる必要があります。

6. 有給休暇の確実な取得、長時間労働の是正など

コロナ禍で休業する職場でも、休業日と別に有給休暇を確実に取得させなければなりません。また、会社から休業日とされた日も、労働者が希望すれば、有給休暇を取得することができます。
高齢の嘱託社員の比率が高まっており、65歳(事情により70歳)までの定年延長や、同じ勤務シフトで働く場合の「同一労働・同一賃金」などを検討します。「働き方関連法」により、自動車運転業務は2024年4月1日より時間外労働に、年960時間の上限規制が適用されます。この確実な遵守と、上限規制の一般則適用を求めて運動します。

7. 法令違反の一掃と悪質事業者の排除

2020年のハイタクの労働基準法違反率は、実に87・2%の異常な状況で、コロナ危機の渦中では過去最悪の状態が懸念されます。確信犯的に法令を無視し、労働者を犠牲に生き延びようとする悪質事業者を許してはなりません。
コロナ危機で、最低賃金違反は拡大し、休業手当の不支給も問題になっています。一部のタクシー事業者団体が「国から事業継続要請を受けて運行しているタクシー事業は最低賃金の適用から除外を」と主張していますが、これは労働者の生活をかえりみず、経営者の社会的責任を放棄する暴論にほかなりません。事業継続支援や雇用調整助成金を受けながら、法令遵守のモラルを問われる状況は、タクシーの社会的信頼を失墜させる由々しき事態です。

8. 最低賃金の引き上げと運転者最賃の創設

コロナ禍でも労働者の生活を守り、経済を活性化させるため、最低賃金引き上げや、運転者最低賃金の創設を目指します。労働者の生計費に地域間格差がほとんどない以上、全国一律で、時間額1500円を求めます。中小・零細企業に対し最低賃金支払いのための支援策を拡充することも必要です。




Ⅴ.「交通崩壊」を防ぎ公共交通を守る取り組み

1. 公共交通としてのタクシーを守る政策の推進

(1) 感染対策とハイタク乗務員への支援
国に対し空気清浄機の導入補助拡大、エッセンシャルワーカーとして最前線で働くハイタク乗務員への危険手当・慰労金等の直接支援とワクチン優先接種(希望者)を要求します。また雇用調整助成金の特例期間延長を要求し、休業補償日額の算出は総賃金を労働日数で除する方法に改めるよう求めます。

(2)事業継続の支援
タクシー事業者の倒産・廃業を避けるため、融資だけでなく、公租公課の減免、減収分の補填などの直接支援を求めます。車両購入、感染防止対策、キャッシュレス決済導入等への助成も強く求めます。

(3)需要創出の支援
ワクチン接種に際して最大限のタクシー活用と、感染収束後の経済対策を要求します。また交通弱者が安心して外出できるようタクシー利用券の配布や、バス路線やスクールバス廃止が検討される場合のタクシー活用を求めます。

2. 改正タクシー特措法の限界を乗り越え、適正化・活性化の推進

(1)特措法の運用見直し
コロナ危機で、台数と運賃の適正化が一層必要であるにもかかわらず、特定地域は大幅に減少しており、指定基準の見直しを求めます。

(2)台数・運賃の適正化
①緊急事態宣言下でも事業継続を要請するならば、地域ごとの必要台数と稼働補償を明確に示すよう求めます。
②労働条件の向上と適正利潤が捻出されるよう、早期の運賃改定を求めます。
③「ダイナミック・プライシング」等の新たな運賃制度については、利用者とのトラブル・苦情が予想され、タクシーの公共性を脅かすことから導入に反対します。また、新たな運賃制度については、実証段階から労働組合との協議機関を設置し、検証するよう求めます。

(3)タクシー事業の活性化
改正地域公共交通活性化・再生法による「地域公共交通計画」を全自治体で策定するよう求めます。また運輸局・支局の人員を増強し、地域交通のマネジメントや自治体との調整を行える体制の整備を求めます。タクシー事業者への福祉車両・UDタクシー導入助成の拡充を求めます。

(4) 監査体制の強化と悪質事業者の排除
悪質事業者を排除するために、厳正な監査と処分の実施、監査体制の強化を求めます。

(5)タクシー事業法の制定
全国的・恒常的な対策のため、タクシー事業の免許制(5年ごとの更新制)、需給動向判断の復活を柱とする「タクシー事業法(仮称)」の制定を求めます。

3. ライドシェアと自家用有償運送の安易な拡大阻止

(1)ライドシェア導入阻止
ライドシェア運転者は自営業とされ、最低賃金や有給休暇、労災保険の適用がない無権利労働となっており、導入に強く反対します。安全と利用者保護の観点からも認められません。地方議会におけるライドシェア反対の意見書採択を継続します。その他、白タク行為の摘発と取り締まり強化を各機関に要請します。

(2) 自家用有償運送の安易な拡大阻止
ライドシェアにつながる安易な自家用有償運送の拡大に反対し、タクシーを地域交通の主力に位置づけた「地域公共交通計画」作成を求めます。


Ⅵ.政治課題の取り組みと平和運動の推進

1. 自公政権のコロナ対策と政治姿勢を批判し、政権交代を実現しよう!

安倍政治を継承するとして就任した菅首相は、コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、東京五輪の開催に固執し、変異株の日本流入を公表せず、第5波の感染拡大を許しました。緊急事態宣言を何度も拡大・延長しましたが、病床不足は現実のものとなり、「医療崩壊」の危機を深めています。
昨年末にコロナ患者受け入れ病院にまで病床削減を求め、ワクチン接種だけで乗り切ろうとしましたが、その接種も進まず「補償なき自粛」を長期に強要するなど、有効なコロナ対策を取らない菅政権は、国民の支持を失っていきました。そして9月3日には総裁選不出馬を表明し、首相を辞任することを決め最重要のコロナ対策を放棄したのです。
自民党総裁選で誰が選ばれたとしても、長期政権で金権腐敗を深め「命より利権」の政治姿勢を続け、格差と貧困を拡大させてきたうえにトップが責任を放棄する自民党政権では今ある危機を乗り越えることは不可能です。10月21日に任期満了を迎える衆議院選挙に勝利し、「命と暮らしを最優先」の政治に転換させるために全ての地方組織が推薦候補を確定し、政権交代めざして全力をあげます。

2. 平和運動・政治課題の取り組み

次期衆議院選挙は新型コロナウイルスから命と生活を守る重要な選挙になります。現状への不満と将来不安に対する思いを投票行動で示し、新型コロナウイルスの感染拡大、倒産と失業、格差と貧困の社会を変えるために自公政権を打倒し、「誰もが安心して生活できる国」にしていかなければなりません。
私たちは連合や平和フォーラム等と連携し、次の課題の実現をめざして行動します。
①新型コロナ感染症の拡大を阻止するため、医療体制の充実、安定した雇用、エッセンシャルワーカーの地位向上を求め、「医療崩壊」「雇用崩壊」「交通崩壊」の危機を乗り越える施策を求めます。
②憲法改悪に向けた国会発議を許さず、9条改憲と緊急事態条項の新設を阻止するために全力をあげます。
③全国一律・時給1500円の最低賃金を求め、同時に、中小零細企業が最低賃金を確実に支払えるよう国の支援を求めます。
第76回の原水禁世界大会・長崎大会。
唯一の被爆国として「核兵器禁止条約」への
批准を求める川野浩一共同議長

④核兵器廃絶のために積極的に行動し、核兵器禁止条約の早期批准をめざすとともに、すべての被爆者が救済対象になるよう求めます。
⑤福島第一原発事故の汚染水対策、損害賠償などについて国と東電の責任ある対応を求め、原発再稼働と新設に反対します。青森県六カ所の核燃施設建設阻止を訴え、原発に依存しないエネルギー政策への転換を求めます。
⑥沖縄・辺野古の新基地建設に反対し、米軍基地の縮小・撤去を求めます。日米安保条約の不平等に抗議し、地位協定の見直しを求めます。
⑦消費税に反対し、再配分機能を強化した税制の実現のために奮闘します。
⑧年金・医療・介護の切り捨てに反対し、社会保障制度の拡充を求めます。
⑨差別と人権侵害を根絶するために、部落解放共闘をはじめとする運動に参加し、基本的人権の確立のために行動します。
⑩全自交のタクシー政策・交通政策の要求実現のため、支持政党・議員と連携して政策活動を進めます。国政選挙や地方自治体選挙では、全自交労連のタクシー政策に理解を示す候補者・政党を推薦し、その当選をめざして闘います。
長崎平和記念式典


組織統合を果たした第78回臨時大会(全電通会館)
Ⅶ.組織拡大・強化の取り組み

1. 統合を活かした組織拡大行動の推進


全自交労連とK P U が2021年5月に組織統合を果たし、東京を中心に組織の拡大が図られました。この統合による力を活かし、全国的な組織拡大・強化を推進します。
(1) 職場の組織率の向上と交渉力の強化
各職場での組織化は最優先課題です。コロナ禍での政策闘争や春闘をはじめとする単組活動を強化・宣伝し組織の拡大をはかります。乗務員高齢化の現実を直視し、定時制・嘱託者の組織化に全力をあげます。全自交が取り組む「ハンドル共済」への加入を推進します。
(2)地域での組織拡大
未組織労働者や産別未加組合との接点を拡げ、地域における組織拡大をめざします。個人加入の地域ユニオンづくりも検討し、組合のない職場にも加入を働きかけます。
(3)相談の強化
コロナ禍でタクシー労働者の生活危機は深刻さを増しています。労働相談・生活相談に丁寧に対応して、困難や職場の不条理を親身に聞き取り、信頼関係を築いて、組合結成や活動の推進を促します。

2.機関紙活動の強化

機関紙を「組合費の領収書」と位置づけてタイムリーに発行し、機関紙でつながる強固な労働組合をめざして奮闘し、SNSによる情報発信にも挑戦します。

3. 学習活動の強化と次世代の活動家育成

(1) 労働組合の意義と役割の学習強化
労働者の権利は、戦前からの長く激しい闘いで獲得されてきたことを忘れてはなりません。いまコロナ禍で労働者の苦難が深まる中、社会的不条理と闘う頼れる存在として労働組合の価値が問われており、その自覚を持った活動が求められます。

(2)次世代の育成
次世代の育成は焦眉の課題であり、地連・地本、単組などでの学習会実施と本部セミナー等への参加を推進します。


Ⅷ.自動車教習所労組の闘い

(1)自動車教習所を取り巻く情勢

新型コロナウイルスの感染拡大は自動車教習所にも多大な影響を与え、一時は多くの自動車教習所が休業を余儀なくされ、再開後も感染対策に追われました。
コロナ禍で、授業開始の延期などにより学生に時間的余裕が生まれた点や、鉄道・バス等の移動を避ける必要が生じた点、職を失った人々が免許取得に向かった点などが、自動車教習所の入校生数を押し上げています。一方、今夏の第5波感染拡大では、全国の自治体が「お盆の帰省自粛」を呼びかけ、帰省中に免許を取得する人が大幅に減少。地方の自動車教習所では例年入校生の多い8月に、入校者数が大きく減少した事例も多数あり、都市部と地方部では明暗が分かれました。
コロナ対策を求めた東北地方運輸行政懇談会
コロナ禍による貧困と格差の拡大が若年層を直撃し、免許取得の金銭的余裕もない若者が増えたことも見逃せません。少子化と人口減は止まらず、将来的に入校生の数を押し下げる要因になり続けます。
一方で高齢運転者の事故が社会問題となる中、高齢者講習にしっかり対応し、講習の質を確保することも自動車教習所の大きな課題になっています。自動車教習所は、①運転免許取得のための教育施設②各種法定講習の機関③地域の交通安全教育センター、という社会的役割を担っていますが、指定教習所数の減少に歯止めがかからない状況が続いており、この10年間で指定講習所数が60減少しました。一方、卒業者数は増加傾向となっています。
厳しい環境下で、自動車教習所業界は、生き残りをかけた競争に駆り立てられ、教習料金のダンピングや誇大広告が横行する状況にあります。
教習の質を劣化させ「自動車交通の安全を支える」という社会的任務を後退させることがあってはなりません。
また、現場の自教労働者の労働条件は、教習の質を大きく左右する最も重要な要素ですが、感染防止対策など指導員の業務が多忙化する中でも、賃金は低い水準に抑え込まれています。嘱託・契約指導員などの非正規社員化も進んでおり、総人件費は明らかに低下しています。送迎業務などを兼務することで蔓延している長時間労働をなくし、安定した労働環境を確保して指導業務に集中できる労働条件を確立することが求められます。

(2) 高齢者事故対策での活用

警察庁のまとめでは、2019年に75歳以上の運転者が起こした交通死亡事故は401件に上り、前年より59件減ったものの、死亡事故全体に占める割合は14・4%で過去最高だった前年に次ぐ高水準となりました。75歳以上の運転者10万人あたりの死亡事故件数は6・9件で75歳未満の2倍以上となっています。この状況を改善するためにも指定自教を「地域の交通安全教育センター」として大いに活用し、高齢者の事故や悪質事故を減らす対策に活かさなければなりません。
指導員を増員して70歳以上の免許証更新者に対する高齢者講習をさらに充実させるとともに、75歳以上の高年齢者については、認知機能検査の結果に基づいた高齢者講習をしっかりと行い、身体機能や判断力の低下がみられる場合は、それを自覚してもらうことで、運転免許証の返納を促進させることが必要です。
2020年の高齢者講習受講者数は325万5050人で5年前と比べ5785人増え、認知機能検査受験者数は188万2776人で25万2067人増加しています。

(3) 自教労組の運動課題

(1) 雇用・労働条件改善の取り組み
指導員が意欲を持って働ける労働環境は、公益性の高い教習業務を適正に行う上で何より重要です。エッセンシャルワーカーとして、自教指導
員にふさわしい賃金・労働条件の確立を目指します。
①労働条件の不利益変更や不当労働行為を許さず、真摯な団体交渉を通じて、賃金・労働条件の改善に取り組みます。
②適正な定期昇給や一時金・退職金の確保に奮闘します。時間外労働について「月45時間、かつ年360時間」の遵守を求め、待機時間を含めた適正な労働時間の算定による賃金支払いを行わせます。
③感染防止対策業務に対する手当を要求します。
④短時間及び有期雇用者に対する不合理な格差を是正し、正規雇用者との待遇差の内容・理由・決定に関する使用者の説明義務について協定化と就業規則の変更を進めます。
⑤事業休廃止など、雇用・労働条件にかかわる経営変更については、労働組合と事前協議し、同意を得るよう「事前協議・同意約款」を協定化します。

◆ 定年延長の取り組みと嘱託指導員の労働条件改善
65歳までの定年延長▼契約社員(定年後再雇用者を含む)が正社員と同一シフトで働く場合の「同一労働・同一賃金」▼高齢指導員の健康に配慮した勤務シフト▼健康診断と日常的な健康管理の充実︱︱を求めます。

(2)自教の政策課題
社会的公益性の高い業種として、以下を要求します。
①感染防止費の自治体支援。
②料金のダンピングや規定時間内卒業を謳う誇大広告への規制と、監督・指導。
③高齢者講習、講習予備検査の料金適正化と、受講者(受験者)への公的補助。
④高齢者講習指導員資格も地方公安委員会での取得。
⑤普通免許教習生に対する「原付教習」の義務化。
⑥自教を地域の「交通安全教育センター」と位置づけ、違反者講習、処分者講習、更新時講習など、免許関連業務を指定教習所に委託すること。
⑦新型運転シミュレーター導入の公費負担。

(3)自教労組の組織拡大
多くの自教職場に労働組合が存在せず、長時間労働と低賃金を押し付けられており、未組織労働者に組合結成と全自交への結集を強く呼びかけます。労働条件改悪やパワハラ、不当労働行為を絶対に許さず、労働基本権を守り抜きます。


苦境に負けず頑張ろう

ビラ配り対話する釜石支部の仲間
全自交岩手地本釜石支部(今野徹委員長)は9月5日、三陸沿岸の宮古駅、大船渡市の盛駅、釜石駅で組織拡大行動を行い、JR駅のタクシープールに待機する仲間に本部作成のチラシを配り、対話を重ね組合結成と全自交への加入を呼びかけました。
宮古駅には通常20台を超える待機車がありますが、コロナ感染の影響で稼働台数が極端に低下し、4台しか待機していない状況です。乗務員から苦境の訴えが多く寄せられました。また、大船渡市の盛駅では「利用者が減って、勤務シフトも3勤・3休になった」との声が聞かれました。
「苦境に負けずに頑張ろう」と励ますとともに、今後の自治体への要請に反映させることとしています。


コロナ感染の労災認定状況ただす

兵庫県交運労協ハイタク部会(北坂隆生部会長)は、9月14日、今回で6年目となる兵庫労働局への要請交渉を行ない、コロナ禍による労働条件悪化への対応など11項目について回答を求めました。全自交兵庫地連からは、北坂隆生委員長、成田次雄書記長ら6名、私鉄関西ハイタク労連から田中滋修委員長ら2名、全自交関西地連から加藤直人書記次長が出席し、兵庫労働局からは、原俊司雇用環境均等部・企画課長、岸本昌一特別司法監督官ら8名が応対しました。
タクシー乗務員がコロナ感染した場合の労災認定について労働側は「ハードルが高いのでは」とただしました。局側は「感染経路が特定されない場合も、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事し、業務により感染した蓋然性が高い場合、労災保険給付の対象となる」と説明。
9月3日までに局で受け付けた労災申請のうち、運輸業では「申請受理16件、決定10件(支給10件)、調査中6件」と回答しました。明らかに業務以外で感染した場合を除き、給付されているようです。
また局側は昨年、管内で実施した監督・指導でタクシー事業所の3割に有給休暇に関する問題があったとし、「出勤率の算定に問題があった」、「年5日以上の有給休暇を全員に取得させるように指導すると『コロナ禍で無理だ』と言い訳があったため指導した」などの実例を示しました。
労働局に回答を求める北坂部会長




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