この日、厚労省交渉終了後、15時45分から衆議院第一議員会館の大会議室で行われた国交省との交渉は、最初にハイタクフォーラムの伊藤実代表が挨拶した後、国交省の祓川(はらいかわ)自動車局長が挨拶。国交省が取り組む空気清浄機導入への補助、減車制度の延長、雇用調整助成金の再延長要請等を報告するとともに、「ワクチン接種が始まるのを受け、接種会場に高齢者を運ぶとか、医療チームが接種のために寝たきりの高齢者の家に行く際にタクシーを利用してもらうよう各市町村の首長に要請している。自治体との運送の協定を結び早く実施するためにチャレンジしていく。」と述べました。
伊藤代表が要請書を手交した後、タクシー政策議員連盟の辻元清美会長が挨拶。その後、担当官が要請事項の各項目に対し、順次回答しました。
その一部を以下、抜粋します。
●コロナ禍からタクシー事業の維持・存続を図る施策
①供給力の削減を実施されたいとの要請については、昨年3月に減車制度を創設し、その都度延長して柔軟に運用していく。
②緊急事態宣言の基本対処方針でタクシーは、国民の生活と経済の安定確保のため、地域住民の足として事業を継続し、乗務員もエッセンシャルワーカーとされている。地方創成臨時交付金を積極的に活用するため、自治体に出向き、空気清浄機への補助や必要な事業継続の支援を要請した。
祓川自動車局長(右)に
要請書を手交する伊藤実代表(左)
③感染リスクの少ない移動手段を確保することは重要な課題。乗り合いタクシーの運行の支援を通じて地域公共交通の確保・維持を図っていく。地方創成臨時交付金を活用し、タクシー事業者への支援が行われるよう自治体の首長に直接働きかけを行っている。
④補正予算に空気清浄機の導入等の感染拡大防止策の支援も盛り込まれており、利用者のみならず運転手の方々も感染リスクを下げて乗務してもらいたい。
⑤厚労省は、重症化リスクの高い医療従事者と高齢者、基礎疾患を有する者、高齢者施設についてのみワクチン摂取の順位を上位に上げている。摂取が円滑に進むようにタクシーの活用含め自治体に働きかける。
●特措法による適正化推進
①特定地域・準特定市域の指定基準は厳格かつ客観的指標で定めているが、コロナで基準となる実績が低下による異常値となり、どういう基準が良いのか検討する。
②運転者負担の見直しについてはタクシー事業者にやめるよう働きかけている。運賃改定実施時にも事業者団体に通達を発出し、手数料等を負担させないよう要請した。
③改正特措法の施行後、下限割れ運賃を設定している事業者は減少している。また、下限運賃の見直しを行っており、運輸局でも下限割れ事業者には指導を行っている。
④運賃改定の審査で安全に係る経費を勘案している。過度な遠距離割引は、是正に向け事業者に対応を求めているが、一義的には事業者が取り組むべき。改正特措法の趣旨が運転者の労働条件の改善にあり、割引運賃の審査に当たって厳格に対応したい。
⑤監査処分制度については、悪質な運送事業者への重点的な監査実施とか悪質重大な法令違反の処分の厳格化等、効果的な監査、公正なる処分を行うこととした。
⑥、タクシーの許可を5年ごとの更新制にして、不適格者を排除するようにという指摘については、貸切バスの許可の更新制度をそのままタクシーに導入すべきか慎重な検討が必要。
●ライドシェア・白タク合法化問題
①自動車の旅客の運送においては、安全・安心の確保が最重要の課題。自家用車を用いたいわゆるライドシェアは、運行管理や車両整備等について責任を負う主体を置かないままに自家用車のドライバーのみが責任を負うことを前提としており、このような形態の旅客運送を有償で行う事は、安全の確保と利用者の保護の観点から問題があるため認めるわけにはいかない。
②自家用有償運送について、バス・タクシー事業者によることが困難な場合には自家用車を用いて有償で運送できる自家用旅客運送制度があり、昨年11月に制度改正されたが、登録には地域関係者で協議を整える必要があるという実施の前提については法改正後も変更はない。地域においてバス・タクシー輸送と自家用有償運送が適切な役割分担の下、住民の移動手段が確保されるよう必要な助言を行う。
③海外のライドシェア事業者は、国内のタクシー事業者の配車サービスを行っていると承知している。いわゆるライドシェアは安全の確保と利用者の保護の観点から問題があるため認められない。
●タクシー事業の活性化とタクシー運賃
①特定地域、準特定地域にあっては需要の喚起を目指す活性化事業を行うことが有効であり、サービスの高度化・多様化を進め、UDタクシーや空気清浄機の導入を補助して需要を掘り起こしたい。
②タクシーの運賃については昨年、48地域で運賃改定をした際に労働条件改善と障害者割引事業に要する経費を運転者に負担させないことを促した。また、鉄道やバスにある回数券や定期券がタクシーにはなかったことから、一括定額運賃や変動迎車料金を導入した。こうした取り組みでタクシー利用者の新規開拓を図っていき、労働環境が改善されていく事を期待している。
コロナ危機を力合わせて乗り越えよう
挨拶する辻元議連会長
タクシー政策議員連盟 辻元清美会長
こんにちは。以前からハイタクの状況は厳しい状況にあったが、そこに新型コロナ感染症の危機が覆いかぶさってきた。一年間持ちこたえてもらい感謝する。東京・大阪などの都市部から離れるとタクシーの有難みが身に染みて感じる。皆さんの職場を守ろうとしているのは、それはタクシーが国民の生活を支えているから。国民の暮らしを守るために新型コロナの危機を力合わせて乗り越えようとしている。今日は現場の声を伝えてもらいたい。
タクシーが無くなってしまったら大変困ってしまう。雇用調整助成金支援制度の延長なども国民の暮らしを守る観点を持って国会で訴えていく。そして直接的には皆さんの職場を守って行きたい。
6名の全自交参加者が発言
新潟地連・海藤さん
〇新潟地連・海藤さん
改正特措法で勧告・命令を
改正タクシー特措法は運転者の労働条件の改善に全く実効性がない。運賃適正化も供給過剰対策も十分に効果が発揮されていない。当初、地域協議会において合意された計画は独禁法の適用除外になり、強制力を持った減車措置がとれ、従わなければ改善命令が出せると言われてきたが、実効性がない。新潟交通圏では計画に同意しない事業者が5社あるが、勧告命令を出さないとなると「正直者がバカを見る」事になってしまう。合意しない事業者が平然としていることに納得がいかない。どうなったら勧告・命令ができるのか教えて欲しい。
【回答】
改正タクシー特措法を運用してきたデータを見ると日車営収や時間当たり賃金は多少改善している。「この運賃はやめろ」「この車は減車しろ」と言っても、車両は事業者の財産ですので抑制的になる。運輸局が汗をかいて地道に働きかけていく。
兵庫地連・成田さん
〇兵庫地連・成田さん
運行記録計の義務化を求める
自家用有償運送に関して一番問題なのは運行管理が弱いことだ。アルコールチェック義務化を含め運行管理を厳しくやってほしい。
タクシー会社の運行記録計は労働時間管理の証拠になる。設置義務のない地域では手書きの日報しかなく信用できない。一律に義務化してほしい。
【回答】
自家用有償運送はバス・タクシー事業とは違って過疎地で行われ、運転手はボランティアである場合も多いことからバス・タクシー程の厳しい基準を設けていない。実態は注視していく。
運行記録計の設置は流し営業の割合が高い地域を運輸局長が指定して義務付けている。全国一律で設置を義務付けることは導入費用の負担や機器によらず適切な管理を行っている事業者がいることも踏まえ、慎重に検討する。補助制度でデジタル式の運行記録計の普及促進に努めていく。
東京地連・菊地さん
〇東京地連・菊地さん
変動運賃(DP)導入は慎重に
河野大臣がダイナミックプライシング(変動制運賃)の導入に意欲的で「ソフトメーターを使って外国のようなサービスができ、需要の掘り起こしができる」と発言したことが報じられた。国土交通省も意欲的だと聞いている。しかし、公共交通だから同じ地域では同じような運賃で安心して乗れるのが基本だ。ダイナミックプライシングという海外のサービスとはウーバーのことを言っていると思うが、日本でのウーバーのサービスは2年前に大雪の時、成田空港まで2万5千円で行くところを10万円も取っていた。利用者にとってどこが良いのか。忙しい時間帯には料金を高くして閑散時間帯には安くするというのは利用者の足元を見て料金を決めていると感じる。国交省はダイナミックプライシングをどう考え、どのような運用が予定されているのか教えて欲しい。
【回答】
懸念する点、私も共感する部分がある。ダイナミックプライシングの名前と報道が先行して若干真意が伝わっていないので我々の考えを紹介したい。2月22日の規制改革推進会議で議論があったのは事実だ。ダイナミックと言う言葉が一人歩きしている。基本的には利用者に受け入れられない変動幅にする予定は無い。海外で行われているようなハリケーンが来ると何倍にもなる運賃制度をそのまま日本で導入できるかと言うとタクシーは公共交通機関なので受け入れられる幅や制約がかかってくると認識している。では、なぜこのような議論が出てきたかというとタクシー需要が伸び悩んでいる中で空いている時間帯にこれまで使ってこなかった利用者を新規開拓する。混んでいるときに捕まえられない時に一部変動すると言うのは議論としてあると思う。ただ、儲かれば何でもいいと言うわけでは当然ない。公共交通としての制約はある。それを頭に入れて検討を進めたい。いきなり全国で展開すると言うよりは実証実験を限定的な環境でやってみてから、慎重にやっていくと考えている。
北海道地連・鈴木さん
〇北海道地連・鈴木さん
運転手に年齢制限が必要
実車時の行灯消灯を要請したが、昨年は地域特性があるので全国一律にというのは難しいとの回答だった。色覚異常者の方々が「空車の赤色文字が見にくいので夜間だけでも行灯が消えてくれればわかりやすい」との要請を受けて質問している。実際、押しボタン式信号も赤色から白に変わりつつある。夜間の実車時にも行灯がつく札幌では東京などから来た観光客が空車と勘違いする。夜間の実写時に行灯を消すことで色覚異常者にも観光客にも優しい。国の政策として検討してほしい。
2つ目は、北海道のタクシー運転手の年齢を見ると60歳以上が70%を超えており、83歳の法人タクシー運転手もいると聞いている。「年齢に制限なし」では高齢化が度を超してしまう。見直しできる点は見直してほしい。事故が起きる前に。
【回答】
高齢ドライバーについて、個人タクシーの方は定年制度が設けられている。少子高齢化が進んでいるため高齢者になればなるほど事故はどうなるのか。少子高齢化が進んでいるので若返りを図ると言うことがどこまでできるか。
また、タクシー運転を生活の糧としているなど、いろんな事情を考えながら、「最後は守るべきは安全だ」と思うので、何ができるか考えていく。
愛知地連・本田さん
〇愛知地連・本田さん
悪質事業者に監査を厳しく
運輸局・支局が監査を行っているが、警察の捜査とは違い監査をして不適合的なところを発見し、指摘・指導して改善するのが目的と言うことは理解しているが、コロナ禍においての監査が、悪質事業者に手を差し伸べ、まじめ事業者に背を向けているような監査になっていないか。
まじめな事業者を守るための監査として悪質事業主には厳しい姿勢を見せて欲しい。
【回答】
指摘についてはしっかり受け止める。悪質事業者に対して行政として徹底的に監査をやっている。現場の監査官にも周知徹底させる。
富山地連・石橋さん
〇富山地連・石橋さん
UD車両開発に運転者の声を
UDタクシー、特にジャパンタクシー(JPN)の全国的に普及を進めてきたが、乗務員からは使い勝手が悪い。スロープは何度か改良が加えられているが、「車イスの乗り降りに時間がかかる」等の構造的な問題がある。開発段階から労働者の代表を加えてほしい。
【回答】
ユニバーサルデザイン(UD)タクシーを使い勝手の良いものとして作っていかなければならない。次なるものがあれば、利用者目線、乗務員目線、事業者目線を入れていきたい。自動車メーカーに今の声を届けたい。障害者の利用者から感謝の声が旅客課にも届いている。
【その他の質問への回答】
①マスク着用義務化については、国交省が標準約款を作り、全国一律に義務化するのは難しい。
②特定地域の指定の延長は1回だけとなっている。3年経過して1回延長して6年が最長。その後の延長はない。これが原則だ。