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新型コロナ禍における運動方針を討議 コロナ危機を団結した力で乗り越えよう!


「交通崩壊」を阻止し、雇用と労働条件を守り抜こう!
ライドシェア導入を許さず、生活に欠かせない地域公共交通を自治体・住民とともに創出しよう!


全自交労連(伊藤実中央執行委員長)は7月5日、全自交会館で3月以来4カ月ぶりに中央執行委員会を開催し、新型コロナ禍における状況把握と運動方針を討議しました。
定期大会に向けた運動方針素案として提案され、「コロナ危機を団結した力で乗り越えよう」「交通崩壊を阻止し、雇用と労働条件を守り抜こう」のスローガンの下、全国でハイタク労働者の命と生活を守り、生活に欠かせない地域公共交通を自治体・住民と共に創出するために奮闘する決意を固めあいました。

Ⅰ.内外情勢の特徴

新型コロナの感染拡大が全世界で急速に進み、感染者数1255万人超・死者数56万1617人(7月12日現在・WHO発表)に達しています。日本国内においても7月12日現在の感染者数は2万1520人、死者数982人を数えました。安倍政権は4月7日、7都府県に緊急事態宣言を発し、外出や営業自粛を要請し始めました。
3月11日にはWHOがパンデミック宣言を発したにもかかわらず、東京五輪の開催を最優先させ、3月24日に延期が発表されるまで、まともな検査も注意喚起も怠るどころか訪日外国人観光客を受け入れ続け、市中感染を拡大させてきたことは厳しく批判されなければなりません。国民の命を守る施策や生活を保障する施策を取らず、「1世帯に布マスク2枚」と「定額給付金1人10万円」さえも届かない有様です。
 今回のコロナ危機をより深刻にしたのは、安倍政権がこれまで大企業・富裕層を優遇し、「命より金」の政策で貧困層を拡大させ続け、医療や社会福祉をないがしろにし、非正規労働の拡大による貧困や長時間労働を強要して健康を奪い、地方切り捨て政策の下で極端な都市部への一極集中を作り、病院や大都市でクラスター感染・市中感染を引き起こしやすい社会に作り変えてきたからに他なりません。今後も満員電車で通勤せざるを得ない大都市部の状況が続く限り、第2波、第3波の感染拡大は避けられません。


1.世界情勢

新型コロナの世界的大流行は、人・モノの動きが世界的に遮断され、国内では感染防止のための「都市封鎖」で需要の蒸発を生み、倒産多発による失業者の急増が引き起こされるとともに、国際金融市場も企業業績や景気悪化から一気に不安定化し、世界経済を悪化させています。世界銀行は6月8日に今年の世界経済成長率を▲5・2%と予想。10年前の世界金融危機を凌駕し、1929年大恐慌以来最悪の景気後退となりました。
新型コロナ危機で貿易が制限され、国内の格差は拡大し、多くの雇用を奪うなど深刻な影響を与え、倒産と失業の長期化が懸念されます。企業や個人を守る支援を各国政府が大胆に実施していくことが求められます。


2.国内情勢

日本経済は、消費税増税で個人消費が落ち込み、昨年の10~12月期で実質GDPが年率換算▲6・3%に転落する中、新型コロナの感染拡大が社会を襲い、大きなダメージを与えました。4月7日に政府は緊急事態宣言を発しましたが、「補償なき自粛要請」となり、飲食・宿泊・観光・交通等で収入が激減し、雇用を失うことによる困窮化が進みました。6月末で感染が収束した場合でも就業者254万人の減少・失業率6%との予想もあり、リーマンショック時の5・1%を上回る「雇用の危機」が懸念されます。第2波の感染拡大が起きればダメージは倍増することは明らかであり、医療体制の強化と大胆な財政発動で雇用を守る対策が求められています。




Ⅱ.コロナ禍におけるハイタク産業の動向

1.新型コロナ感染拡大によるタクシーの営業収入への影響

2月段階では、運賃改定実施地域のうち、13地域で営業収入が対前年プラスに転じましたが、3月前半には新型コロナの影響で営業収入が急激に落ち込み全国平均で3割を超える営業収入が失われました。
4月7日に政府は、緊急事態宣言を発し、4月16日にはそれを全国に拡大。これにより、営業・外出自粛が一気に強まり、4月前半には営収が対前年比で半減以下に急落しました。多くのタクシー会社は休業に踏み込まざるを得ない状況に陥り、4月後半には対前年比7割を超える営収が蒸発する事態となりました。
5月上旬には「ゴールデンウイーク」の観光需要が吹き飛び、京都、山梨、石川は対前年比2割を割り込みました。5月7日に全国39県で緊急事態宣言が解除されましたが、営収は戻らず倒産・廃業の危機が全国を覆いました。5月後半も6割減の営収で推移し、タクシー危機を深刻なものにしています。
5月25日に政府は緊急事態宣言を全面解除しましたが、新規感染者は東京を中心に生み出され続けており、第2波の感染爆発の状況にあります。休業を解除する会社も現れますが、需要の回復には時間がかかる状況にあります。かつて経験したことのない事態は、タクシーの今後の在り方を根本から問い直すことを求めています。


2.深刻化する「交通崩壊」の危機

5月27日に実施された、バス・タクシー・船舶事業者を対象に「現在の状況が続いた場合に事業継続が難しくなるタイミング」についての緊急アンケート(日本モビリティ・マネジメント会議調べ)では、8月までに約半数の交通事業者が倒産する危機に直面しているという衝撃的な実態が示されました。どの会社も新型コロナ関連融資による多額の借入れで辛うじてしのいでいる状況にあり、今後も倒産するタクシー会社が出現することが予想されます。


3.感染リスクが高いハイタク労働者

ハイタク労働者は都市部で「市中感染」も拡大する中、新型コロナの感染リスクと闘いながら重要な公共交通の最前線で働いています。
5月1~2日に厚生労働省とLINEが行った「新型コロナ対策のための全国調査」では、「身体・健康について心配している」と答えた労働者は、職業別でタクシーが32・7%で最も多い結果となりました。また、イギリス統計局が公表したイギリス国内における死亡記録においても、新型コロナによる職種別の死亡者割合が高い職種はタクシーがヘルパーに次いで2番目に多い結果となっています。生活に欠かせない公共交通を現場で担うハイタク労働者の命と生活を守る施策は何よりも重要です。


4.新型コロナ感染症対策で地方自治体によるタクシー支援の拡大

緊急事態宣言で、「補償なき自粛要請」が一気に拡大し、地方都市でも飲食、宿泊、旅行、交通をはじめ、地場産業が大きなダメージを受ける事態となり、全自交労連も全国各地で連合や事業者団体と連携しながら自治体要請を活発化させました。「公共交通は市民生活の移動に欠かせない分野(盛岡市長)」として多くの自治体でタクシーへの独自支援も決定されて行きました。具体的には大阪府で「複数事業所を有する事業所・100万円」、秋田県で「タクシー車両1台・5万円」、東京都と愛知県で「感染防止策に対しタクシー1台・8000円」、三郷市で「タクシー事業者1社・200万」、岩見沢市で「タクシー事業者1社・150万円」、竜ヶ崎市で「タクシー車両1台・10万円」等の緊急支援や交通弱者へのタクシー利用チケットの配布等です。


5.「改正地域公共交通活性化・再生法」と「改正道路交通法」の成立

5月27日、「改正地域公共交通活性化・再生法」が参議院本会議で成立しました。人口減少や運転者不足が深刻になり、地域公共交通の維持・確保が厳しさを増している中、高齢者の免許返納が年々増加する等、地域の暮らしと産業を支える持続可能な移動手段の確保を目指しています。
今回の改正では、①自治体に「地域公共交通計画」作成の努力義務化、②乗合バスの新規参入等の申請があれば国交大臣が自治体に通知し、協議を促す、③過疎地等での市町村等が行う自家用有償運送の円滑化のために、事業者が協力する制度の創設、④自家用有償運送について住民だけでなく観光客等の来訪者も輸送対象とする、⑤貨客混載の手続の円滑化、⑥MaaSに参加する交通事業者の運賃設定手続きのワンストップ化とMaaS協議会制度の創設、等が盛り込まれました。
自家用有償運送に関し、輸送対象が来訪者まで拡大・緩和されたことについては、国家戦略特区の全国化の流れとして今後の動向に注意が必要です。参議院において「ライドシェアの導入は引き続き認めない」とする付帯決議が採択されました。


6.「改正道路交通法」の成立

6月2日、「改正道路交通法」が成立し、①二種免許の取得要件緩和、②市町村営の白ナンバーバスの路線バス停留所乗り入れ、③高齢運転者の「安全運転サポート車」に限る条件付き免許の創設、④「あおり運転」の罰則の新設、がなされました。
二種免許の取得要件緩和では、特別な教習を終了した場合、受験資格を現行の「21歳以上、普通免許経験3年以上」から「19歳以上、普通免許経験1年以上」に引き下げられ、2022年をめどに施行されます。
また、「あおり運転」については、6月30日施行で妨害運転違反を新設し、①車間距離を詰める、②急ブレーキをかける、③不必要なクラクションを鳴らす、④急な進路変更、⑤ハイビーム威嚇の継続、⑥乱暴な追越し、左からの危険な追越し、⑦幅寄せや蛇行運転、⑧高速道路での最低速度違反、⑨高速道路で駐停車、等を通行妨害目的で行った場合「3年以下の懲役、または50万円以下の罰金」となり、著しい危険を生じさせた場合は「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が課されることになります。


Ⅲ.今後の運動の基調

1.命と雇用と生活を守り、働き続けられる労働条件の確立

ハイタク労働者を感染から守る対策は事業者の義務であり、国や自治体が支援すべき施策です。マスク・消毒液・感染防止の車内仕切り等への対策や乗客のマスク着用義務について事業者や行政機関に強く要求するとともに「危険手当」の支給を求めます。また、多くのタクシー会社が休業に追い込まれましたが、中には雇用維持の努力なしに、大量解雇に走る悪質事業者も現れており絶対に許すわけにはいきません。雇用を守る闘いは最重要の闘いとして取り組んでいかなければなりません。
また、休業した場合でも休業補償は平均賃金の100%を実現しなければ収入は大きく低下してしまいます。雇用調整助成金の特例措置を活用させ、「生活できる休業手当」を勝ち取るために労働組合として全力をあげます。


2.生活に欠かせない公共インフラとしてのタクシーを守る

新型コロナ禍により交通産業は甚大なダメージを受け、「交通崩壊」が叫ばれる事態となっています。「コロナ後」に地域交通が「焼け野原」となっていては、その再生・復興は困難を極めます。地域社会と市民生活に欠かせない移動を担っている交通機関を守ることは国と自治体の最重要の責務です。重要な公共インフラとしてタクシーを認識させ、持続可能な輸送を守る施策を国や自治体に強く求めます。
人口減少と高齢化が進む地方部で運転者不足も深刻となる中、ライドシェア不要の公共交通のネットワークを構築し、生活交通を確保することが国や自治体の使命であることを訴えます。


3.組織の拡大・強化を進め、力強い全自交の運動を展開しよう

新型コロナ禍の最前線で働くタクシー乗務員の命と生活を守る施策をしっかり実行させるためには、労働組合の団結した行動が必要です。第2波・第3波の感染爆発が懸念され、闘いの長期化が予想されるコロナ危機に諦めることなく立ち向かい、労働組合の団結した力と行動で戦後最大の危機を乗り越えて行かなければなりません。
職場での「命と生活を守る闘い」とともに、国や自治体への要請行動を積極的に展開することを通してハイタク労働者の信頼を勝ち取り、全自交労連への結集を実現していきます。


Ⅳ.命と雇用を守り、労働条件を改善する取り組み

1.タクシー労働者の賃金・労働条件 【2019年厚労省:賃金構造基本統計調査】

2019年のタクシー運転者(男)の全国平均・月間実労働時間数は、195時間で前年と比べ1時間長くなり、全産業(男)との比較で17時間長くなっています。タクシー運転者の推計年収は2019年で360万円であり、全産業(男)の561万円との格差は実に201万円にもなっています。長時間労働を強いられる上に、年収は全産業(男)の約64%しか手にすることができない状況は看過できません。また、タクシー産業内部の地域間格差も拡大しており、東京都が484万円に対し、最も低い徳島県が205万円で4割に過ぎません。平均年齢は60歳で高止まりしたままです。
新型コロナ感染が収束し、需要回復が進んだ時にタクシー乗務員が大量に離職して公共交通の役割が果たせない状況を作らないために、賃金・労働条件の改善要求を強めていかなければなりません。



2.乗務員の感染防止対策と「危険手当」の要求

タクシーは今回の新型コロナウイルスとの戦いでも、自治体や病院の要請で感染者の移送業務も各地で担っています。今後も海外渡航の制限が解除されて行けば、主要空港の検疫所からの感染者の移送業務も増え、感染者の移送は今後も大きな課題です。また、経路不明の感染が拡大しており、乗務員の感染予防に万全を期す対策が求められます。
ハイタク労働者は感染リスクを抱え、コロナ禍の最前線で働くエッセンシャルワーカーであり、感染防止のためのマスク・消毒剤等の資材の確保や車内を隔離する飛沫感染防止策の設置を事業者と行政に求めます。また、感染防止の観点からタクシー乗車にあたって乗客のマスク着用を促す施策も必要です。
さらに、感染の危険に晒されながら社会的に必要な労働に従事するハイタク労働者に対する日額1万円(2労働日で2万円)の「危険手当」の支給を事業者はもとより、国や自治体に要求します。また、乗務により感染した場合の賃金全額補償を求めます。


3.雇用確保と100%の休業補償の実現

6月19日時点の新型コロナ感染拡大に関連した解雇や雇い止めは、見込みを含めて2万6552人にのぼります(厚生労働省調べ)。業種別では宿泊業、飲食業、製造業・タクシー・観光バスの道路旅客運送業(2448人)の順に多く日々増加しています。
東京で緊急事態宣言が出された翌日の4月8日、東京の「ロイヤルリムジン」は雇用確保の努力をすることなく突如として経営悪化を理由に「乗務員600人全員解雇」を発表しました。「休業補償は失業保険を受給するより不利」「事業再開の暁にはもう一度全員集まって今まで以上に良い会社を作ろう」とうそぶき、解雇を強行しました。「整理解雇の4要件」を全く無視する暴挙であるだけでなく、「同一事業所への再雇用」を前提とした失業保険の不正受給(罰金は受給した金額の3倍)をそそのかすものであり、絶対に許せません。
事業者には、雇用を確保する社会的責任があり、急激な営業収入の低下に対応した稼働台数の削減=休業で雇用をつなぎ留め、雇用調整助成金(新型コロナ特例)を活用した100%の休業補償を行うことが求められます。
厚生労働省は6月12日に雇用調整助成金の拡充を発表し、①助成額の上限を1日1万5000円に引き上げ(4月1日~9月30日)、②解雇を行わない中小企業の助成率を一律100%に、③4月1日までの遡及適用(追加支給分の差額支給にも適用)、④緊急対応期間の延長(9月30日まで)を公表しました。この制度活用で「平均賃金の100%補償」をすべての職場で実現していかなければなりません。
さらに、ハイタク労働者の歩合給制度や時間外労働が組み込まれた勤務シフトであることを考慮し、総支給額と隔たりのない休業補償を求めます。具体的には、休業補償日額を算出するに当たり、総賃金を歴日数ではなく労働日数で除する方法や営収が減少する以前の仮想営収により算出する方法が考えられます。


4.有給休暇・年5日の確実な取得

年10日以上の有給休暇が付与されている労働者に対し、年5日以上有給休暇を取得させることは事業者の義務です。新型コロナの影響でやむなく休業を実施した職場でも、休業日とは別に有給休暇を取得させなければならないのは当然です。また、会社から休業日と定められた日であっても、労働者が希望すれば有給休暇を取得でき、休業を理由に会社が労働者の有給休暇を取得する権利を制限することは許されません。
有給休暇を取得すると大幅に賃金が減額してしまう累進歩合をすべての職場で廃止し、①平均賃金、②通常賃金、③標準報酬日額(要労使協定)のいずれかの方法で有給手当を支給して遜色のない賃金体系にするとともに、仮想営収方式を導入することで賃金や一時金の目減りを解消していくことが必要です。


5.最低賃金の引き上げと運転者最賃に向けた企業内最賃協定の推進

最低の生活すら維持できない現在の最低賃金の水準を改め、全国どこでも時間額1500円まで引き上げ、労働者の生活を保障しなければなりません。また、中小・零細企業や小規模事業所に対する最低賃金支払いのための支援策を講じることも必要です。
ハイタク運転者は新型コロナの感染リスクを抱えながら、社会に必要な公共インフラを日々現場で担っています。最低賃金を超える運転者最低賃金の創設を目指し、企業内最低賃金の拡大を進めていきます。公共交通を担う労働者としてふさわしい賃金水準を確立するためにもこの取り組みは重要です。コロナ禍の長期化でタクシー乗務員が激減する危機に晒されている以上、最低賃金額の引き上げは乗務員確保の点でも欠かせません。


Ⅴ.「交通崩壊」を防ぎ、公共交通を守る取り組み

1.バス・タクシー従事者の感染防止策と「危険手当」や賃金減額分の補填

公共交通機関は生活に欠かせない移動手段であり、安心して利用するためには利用者と従事者の感染防止策は重要な課題です。国・自治体にマスク、消毒剤等の必要な資材の調達や車内における運転席と隔離する飛沫感染防止策に対する国・自治体の支援を求めます。また、感染のリスクを抱え運行を担う乗務員に対する日額1万円(2労働日で2万円)の「危険手当」の支給、及び減収や休業により賃金低下を招いた乗務員に対する賃金減額分の補填を求めます。さらに、乗務により感染した場合の賃金全額補償を求めます。


2.事業継続に向けた緊急支援要請

新型コロナの感染拡大による「補償なき自粛要請」により、タクシー産業の損失は莫大なものになっています。経営が立ちいかなくなる事業者も急増し、「倒産ラッシュ」の危機に瀕しているといっても過言ではありません。事実、5月末現在で事業の休廃止を余儀なくされたタクシー事業者は全国で37社に上ります(国土交通省調べ)。そのうち倒産による事業廃止は9社を数えます。
国土交通省は公共交通事業者への事業継続要請を行いましたが、「全面休業の方が傷は浅かった」とする職場も多数存在します。乗務員を感染の危険に晒しながら不採算覚悟で営業を継続し、そのために多額の借金を抱え、経営不安を高めている交通機関に対し、国・自治体をあげて支援するのは当然のことです。「交通崩壊」を防ぐ大胆な緊急支援を求めます。
地域社会と市民生活に欠かせない移動を担っている公共交通機関を守るために「無利子無担保の融資制度」だけでなく大胆な「真水の財政投入」こそが必要です。


3.交通弱者の移動に関する支援

新型コロナ感染拡大により、外出自粛が強まる中で特に感染を避けなければならない妊婦、高齢者、障がい者等の交通弱者が、買い物や検診・通院等の必要な移動を確保するために、タクシー利用券の配布等を国や自治体に求めます。


4.タクシーが行う「生活支援事業」、「テイクアウト配達事業」への支援

新型コロナ感染拡大を受け、国土交通省は、タクシーによる有償貨物運送を特例で認める措置をとりました(期間は9月30日まで延長)。多くの自治体で「生活支援事業(買い物代行)」「テイクアウト配達事業」に対する配送料金の支援策がとられています。第2波の感染拡大も予想されることから今後もこうした業務をタクシーが積極的に担うとともに、すべての自治体で支援策が講じられるよう運動を進めます。


〈ハイタクの新型コロナ対策に関する政策課題〉

●国・自治体
① 乗務員の感染防止のためにマスク・消毒液等の資材の確保について支援すること。また、感染者輸送については、運転席を隔離する飛沫感染防止策を講じる必要があるが、その設置費用を支援すること。
② 乗務員の感染リスクが高まっていることから、終息までの期間、1乗務毎に「日額1万円(2労働日・2万円)」の「危険手当」支給すること。
③ 乗務により新型コロナに感染した場合、完治するまでの間、賃金の全額補償すること。
④ 新型コロナ感染拡大による影響で休業を実施する場合、雇用調整助成金(新型コロナ特例)を速やかに活用できるよう、手続きを大幅に簡素化すること。また、乗務員の賃金が歩合給であり、勤務シフトに時間外労働が組み込まれていることを考慮し、休業補償の日額算出において総賃金を労働日数で除する方法や減収以前の仮想営収方式を採用し、賃金が減額しない特別な助成措置を講ずること。
⑤ 新型コロナの影響で需要が激減する中、国の事業継続要請を受けて営業を続けるタクシー事業者に対しては、経営困難から事業継続できなくなる事態を避けるために、融資制度だけでなく減収分を補う特別な支援金を支給し、運行を支えること。
⑥ 外出時の感染リスクが高まることから、妊婦、高齢者、障がい者等の交通弱者が安心して買い物や検診・診察等をできるようタクシー利用券、買い物代行サービス利用券等を配布し、安全な移動手段を確保すること。
⑦ 甚大な打撃を受けた観光地に対し、特別な経済対策を行い、復興を支援すること。
⑧ 飲食産業の支援を強めるとともに、タクシー事業を支えるため、タクシー利用にも併用できる飲食券を発行するなど、効果的な経済対策を講じること。


岩手県議会議員 小西和子氏

鉄道・バス・タクシーといった公共交通は、社会機能・都市機能の維持に必要な人々の移動を支えると同時に、買い物や通院、通学など最低限の日常生活を送るために欠かせない重要な産業だ。新型コロナウイルス感染症に伴う休校、外出・移動自粛などの要請により、輸送人員が大幅に減少し、今後の事業存続にも関わる大きな打撃を受けている。
そこで、5月19日の岩手県議会災害対策連絡本部会議(新型コロナウイルス感染症対策)において、「持続可能な地域公共交通確保のための支援について」を質疑した。
1点目は、「高齢者・障がい者・妊婦などの交通弱者に対する乗車助成チケットの発行や、グループ補助金制度を活用しているタクシー業者に対する貸付金の返済猶予又は減免措置を講ずるべき。」と質した。答弁「高齢者・障がい者・妊婦などの交通弱者の移動手段の確保に向け、県においては、市町村が実施する高齢者を対象とした移動支援のサービスや、ハイリスク妊産婦の通院等に係る移動の支援に対し、財政支援を行う制度がある。運転免許証の自主返納者に対し、バスやタクシー券の助成券等を交付している市町村もある。また、地方創生臨時交付金を活用して、飲食店とタクシーを利用できる割引クーポン券の販売や、タクシー事業者と飲食事業者が連携してテイクアウトの普及を支援する取り組みを行おうとする市町村もある。タクシー移動については、それぞれの地域の交通事情や店舗の状況などによって事業が異なることから、現時点では県としての支援策は検討していないが、地域における交通弱者の移動手段の確保の支援に取り組んでいく。」

2点目は、「グループ補助金制度を活用しているタクシー業者に対する貸付金の返済猶予又は減免措置を講ずるべき。」と質した。答弁「グループ補助金の自己資金分に係る、いわゆる高度化スキーム貸付については、貸付を行っている、公益財団法人いわて産業振興センターと連携し、返済が難しい事業者についても、最終償還期限の延長や毎回の返済額の低減など柔軟な対応を行っている。」
3点目は、「各事業者が調達するマスク等の衛生資材の調達費用に対する補助もしくは現物の給付を行うべき。」と質した。答弁「感染防止対策について、公共交通機関は、不特定多数が利用することから、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために、衛生確保の取り組みは非常に重要であると認識している。なお、国が策定した新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針において、『政府は、関係機関と協力して、公共交通機関その他の多数の人が集まる施設における感染対策を徹底する』とされていることから、機会をとらえて、国に対して要望していきたい。」交通弱者をはじめとする住民の生活にとって不可欠な地域公共交通の崩壊を防ぐため、公共交通への支援をはかるよう、今後とも取り組んでいく。


早期に独自の緊急事業継続給付金を

全自交新潟地連(宮沢委員長)は連合新潟とともに6月8日、新潟県に対し、新型ウイルス感染症に係る「緊急事態宣言の影響による地方公共交通事業者への事業継続支援に向けた要請」を行いました。この要請行動には、連合新潟の牧野会長(写真中央)をはじめ全自交新潟地連の海藤書記長(写真一番左)ら交通部門の構成組織代表者ら7人が参加し、新潟県の花角知事ら4人が対応しました。
はじめに要請書を手交した後、牧野会長が「緊急事態宣言が解除されはしたが、疲弊した景気を回復するにはまだまだ時間がかかる。新しい生活様式への対応を踏まえると、公共交通機関の利用控えも継続している。県としても支援をお願いしたい」と述べ支援を要請しました。
花角知事からは「全国知事会議でも、 地域の公共交通機関、離島航路、地方鉄道、バス、タクシーなど、生活必需サービスとして提供を担っている事業者が大きな影響を受けており、何かしらの支援が必要ではと問題提案させてもらっている。県としてもどういう応援ができるか関係者のみなさんとコミュニケーションを取り検討していきたい」と応じました。

要請事項は、①地方公共交通事業者が事業継続できるよう、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による減収対策として早期に県独自の緊急事業継続給付金等を交付すること、②公共交通サービスおよび新型コロナウイルス感染症終息後の観光交通を堅持するため、貸し切りバスや路線バス、タクシーの維持費に助成金や固定資産税額に対する支援金を交付すること、③安心、安全な公共交通サービスを提供するため、感染拡大防止策等に関わる事業経費に対して支援金を交付すること、④県民生活の足である公共交通サービスを維持するためにも、雇用調整助成金の活用によりドライバーの雇用が維持されるよう引き続き労働局と連携し雇用調整助成金の活用を呼びかけることの4項目。
新潟県はこの要請行動の直後に「感染拡大防止対策推進支援金」として道路旅客運送業の1事業者あたり5万円から20万円の支援金給付を決定しています。この他、新潟県内の新潟市、長岡市、小千谷市、村上市、燕市、糸魚川市、聖籠町、上越市が独自のタクシー支援を決定しました。


適正需給・適正運賃と労働条件確保を

北海道交運労協が北海道運輸局と北海道労働局に適正需給・適正運賃の確立や適正な労働条件の確保を要請し、運輸局からは6月17日、労働局からは6月23日に文書による回答を得ました。
運輸局は「準特定地域は供給過剰となる恐れがあることから毎年8月に適正車両数を公表している。特定地域から準特定地域となった札幌交通圏は4月1日に適正車両数を公表した」と回答するとともに、5月に地域公共交通活性化再生法が改正されたことを受け「市町村が行う自家用有償運送の実施円滑化に一層取り組む」としました。また、運賃改定時の「留意事項」については「タクシー運転者の労働条件改善が運賃改定の理由の一つ。改善するよう事業者に指導文書を発した」と回答しました。アジット社等の実証実験については「一部自治体でライドシェアの実証実験を行っているが、ライドシェアについては安全の確保と利用者の保護の観点から問題がある」としています。
労働局は「労働時間・賃金支払い・有給休暇の年5日付与義務について適正に監督指導していく」と回答するとともに「同一労働・同一賃金の説明会を開催し中小事業者に周知する」「最低賃金の必要な指導を行う」としました。


公共交通の支援強化を求め




● 熊本県・人吉つばめ支部の状況
・ 組合員と家族13名が避難所に避難。
・ 1名が通勤経路遮断のため孤立状態。
・ 自宅の1階部分水没 3件
・ 床下浸水1件

● つばめタクシーの被害
・ 自宅の1階部分水没 1件
・ 床上浸水 2件
・ 本社社屋1階部分が浸水し、電子機器等使用不能
・ ジャンボタクシー2台、介護専用車両1台、タクシー車両24台が水没し使用不能


「機関紙は組合費の領収書」

全自交東京地連は6月16日、全自交会館で日交労本部の黒木守教宣部長(写真下)を講師に迎え、「教宣学習会」を開きました(写真左)。
東京地連のいくつかの加盟単組では、機関紙の発行に着手していないこともあり、労働組合における教宣について、改めて勉強することの必要を感じ、労働組合にとっての教宣活動の在り方や重要性を確認し、機関紙づくりの実践として、レイアウトや記事作成の注意点などを学習しました。
新型コロナウィルスのクラスターが発生しないように、万全の準備を整えて、総勢21名の組合員が参加しました。

教宣に関しての学習会は初の試みでしたので皆が真剣に聴講し、見出しや原稿作成などの実践も交えて、活気のある学習会となりました。
東京地連では月に1回発行の「東京FLEET」が、今回で第80号となり、認知度も高まってきましたが、機関誌の発行は継続することが大切です。今まで組織内での教宣活動に取り組みがなかった単組では、この機会に壁新聞やビラなどから挑戦していくことを呼びかけました。キーワードは「機関紙は組合費の領収書」です。


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